がらくたマガジン

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三河ごーすと『友達の妹が俺にだけウザい』を読んだ (復)

三河ごーすと『友達の妹が俺にだけウザい』GA文庫、2019を読んだ。1巻である。

 

 

友達の妹が俺にだけウザい (GA文庫)

友達の妹が俺にだけウザい (GA文庫)

 

 この世界のウザさは褒め言葉に入ると思う。何故かというと最初の語りから若干ウザいのだが、フキノトウめいた味がある。苦いが、山を乗り越えるとおいしくなる。お前……分かっててその語りだな……という入りだ。

 

出てくる人物は、デキる系主人公にまとわりつく友達の妹で美少女……主人公の教室に転校してくる従姉妹の美少女……そして主人公がリーダーであるサークルのメンバー(イケメンと美女)。わちゃわちゃしたコメディだが、味が濃すぎない程度に流行りネタを挟み、「ここからスタートしてるけど、どうしてこの地点になったのだろう」と思わせる舞台装置なので、キャラで魅せるだけでなく、ストーリーも気になってくる。

 

ギミックも面白い。途中でどうみてもLINEのレイアウトを挿入し、デカ文字やフォント変えもバンバン入れてくる。とはいえ文章が丁寧なので、ギミック頼りにならずに小説が読める。

 

実際に読んでみて好印象だったのが目次の多さである。幕間を含めて第九話まであるし、エピローグなんて三つもある。読む前は「ゴチャゴチャしてるな……」程度にしか考えていなかったのだが、本を開いてみるとセーブポイントが細かく設定されていることに気づいた。夜中に疲れていても「一章だけ読んじゃうか」という心持ちになるので、スルスルと読めるのだ。

 

キャラ紹介に入ろう。ヒロインたちは全員ウザい。褒め言葉的な意味だがウザい。ファーストヒロインである友達の妹はカバー表紙を飾っており、主人公にまとわりついて何かあればすぐにラブコメ系いたずらをしようとする。火属性のウザさだ。それなら他のヒロインは大人しいとか真面目系とかで個別化を図るのかな……と思っていたら他のヒロインも同じくらいウザい。セカンドヒロインはツンギレみたいな感じで主人公にどんどん圧をかける、いわゆるバーナー系火属性だ。同じサークルのメンバーである美人女教師は女教師らしくハイヒールと年長者の貫禄で主人公らを脅かしてくる、さしずめナパーム系火属性である。男ももちろん登場するが、彼らはたいてい癒やしキャラなので炎上の心配をしないでもよいだろう。

 

もちろん主人公も黙って焼かれているわけではなく、ダイヤアイス系水属性の彼はサバサバとウザいヒロインをスルーし、無情に突き放す。たまに無情になりきれないのでちょっと構ってしまい、イベントCGみたいなことが起きるが、火属性は水属性に勝てないのでゴールインにはならない。ちょっと火属性が強すぎることもあるが……

 

ウザいヒロインに負けず劣らず主人公の性格はアクが強い。そうでないとやっていけない屈強な社会なのだろう。高校生なのに行動力が異常に高く、仕事できるマンである。なんで高校生なのに営業活動やってるの? ヒロインズの猛攻をしのいで自分の目的に一直線(時折ヒロインに負ける)の主人公は好印象である。将来有望なので気になる。

 

またこの小説だが、先日二巻が発売された。第一巻のラストからの強烈なスタートだが、購入してまだ読んでいないのでどんな展開になるか楽しみだ。パワフルなパンチを食らわせてほしい。

 

《終わり》