がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

舞城王太郎『NECK』講談社文庫、2010

今回で終了でした。全四作ですね。

『the third』:同名の映画原作! ということもあってか、良くも悪くも映画を意識してるなあ、という感想でした。または甘酸っぱいあまあま青春ドラマを作ろうとして、なんか熟してない渋柿が混じりこんでいて苦ッ!! 
 収録されている文章が映画の脚本であるため、文章の形式も人物名とセリフ、それから最低限の描写(【66 山荘の裏山】など)と削られまくっており、徹底的に勢いをつけるために加工された作品です。勢いが強すぎてちょっと飛ばし読みしちゃった文章もあるので、二週くらいした方が良いかもしれません。なんという読み技量不足!
 物語は、恐怖そのものがお化けを形作るのだという理論を追い求める真山杉奈が、彼女を好きになっちゃった主人公である首藤友和、そして首藤が助力を求めることになる彼の友人兼ホラー作家の越前魔太郎と霊能力者である赤坂英子を巻き込んで繰り広げる代物。素材の調理法によってはどこまでも暗みへと落ちていくこともできる話ですが、ここで展開されるのは明るく陽が射すコメディタッチ。トンデモ騒動と、若干洒落にならなそうなエピソードの中で育まれる、杉奈の純真さとしぶとさ。首藤の誠実さ。越前の若干おちゃらけた、けれども心の底にある密かな思いの数々。ストーリーと同時に人物たちの仄かににじみ出る内面を考えるのも一興でしょうか。
 次いで役名の表示についてですが、首藤と越前など主要人物は苗字ですが、杉奈だけ名前で表示されています。杉奈がなんか親しく感じられるのか、もしくは野郎どもに興味なんざねえよ! といったところでしょうか。
 若干映画すぎるというか、あれこういう反応おかしくない? 又はえーここ勢い殺しちゃってるだろー、と思う場面もありましたが、キャラクターたちは好感の持てる人々が多く、楽しいつくりだったと思えます。でも主人公の首藤よりも、ちょっと振り回され気味のある越前の方に感情移入しちゃったり。トラウマのせいで布団大嫌いベッド大嫌いになり、ダッフルコートを着て寝たり床の上で熟睡している姿とかかーわーいーいー!
 また、舞城王太郎さんは越前魔太郎という覆面作家名義で、冥王星Oシリーズも刊行されているようです。多筆。
 ややの苦味が混ざった恋愛と恐怖と化物ドラマ、楽しくも怖みを魅せてくれる作品でした。
 映画は未視聴なので比較できてはいませんが、果たしてどんな出来なのでしょうかうーん。

 というところで舞城王太郎『NECK』終了です。次は何にするべきか。戦闘妖精とかどうでしょう。

NECK (講談社文庫)

NECK (講談社文庫)