がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

キャラに動かされる日々(20260402)(復)

 4月! 新学期や新年度に入りました。それはいろいろなものが始まるし終わるし体の調子を崩すしイベントの裏方や雑用として参加して「足の調子がヤバいぜ!」となった月であり、内科で抗生物質をもらいながら4月に突入しました。ウオオオ! このまま行きます!! 転ぶまで走ります!! 書評もします!!

 あと先日こちらのイベントに裏方として参加しました。

『これは経費で落ちません!』

青木祐子『これは経費で落ちません! 8 ~経理部の森若さん~』集英社オレンジ文庫、2021

 主人公である森若沙名子(もりわか・さなこ)が勤めるトナカイ化粧品は天々コーポ―レーションの買収に成功した。しかし経理部に増員はないため経理部員である沙名子は残業続きだ。それに加えて元トナカイ化粧品の従業員が不審な行動を起こし、会社の宣伝ブースを出したら彼氏である山田太陽(やまだ・たいよう)の元カノが来て沙名子はビビる。タイムカードのごまかし、経費の不必要清算、出張中の彼氏の襲来など、放っておけば大火事になる不祥事を取り除くべく沙名子は奮闘する。

だいたいのあらすじ

 たまには新しいジャンルに挑戦してみるか~! と思って購入したのがこちらです(本屋にちょうど8が置いてあったんですね)。ナンバリングは8ですが、1や2を読まなくてもスラスラと理解できるのは作者の文章技巧の賜物です。一部過去の事件とかかわる場所もありますが、そこは今後……読んでいきます!

 シリーズは現在で13巻まで発売しており、かなり安定して読める印象があります。会社経理の勉強になる……ところもありますし、主人公である沙名子がブレない性格のおかげか、読み口としてかなり読みやすいです。

 彼女は経理部員だけあってロジックが強いというか、「あなたの話だとこうなりますけど、それって数字の辻褄が合いませんよね? なので本来はこういう状況だったのでは?」と探偵さながらのスタイルで謎に迫ります。お金の厳しさはどこでも変わりない!

 出された領収証に不審な点があれば突っ込むし、伝票に不備があったら自分の力が及ぶ範囲でやりくりする。そういう沙名子さんはキビキビとしてロジカルなのですが、彼氏(山田太陽)が出てくると急にムキになる。明らかにロジカルでなくなる。特に太陽はいま出張しているため、たまに彼の顔を見るとホッとする。でも東京に帰ってきたときに家を宿泊所代わりにはされたくない。太陽とはビデオ通話で夜にやりとりしているが、沙名子はマニキュアを塗りながら適当に太陽の相手をする。俺森若さんのこと……好きかもしれない……

 昭和、大正にこの手のジャンルは成立しなかっただろうと思うと、時代の変遷を感じられて面白いです。男性を主人公にするとアクションが入る可能性が出てきますし、主人公が学生では会社関係の厄介ごとは書きにくい(出張や配置換えもありますしね)。絶妙な位置取りだと思います。

 また、文章もかなり読みやすくてスラスラ入ってきます。沙名子さんは物事をスパッと断ち切って読者に提示してくれるし、謎があっても仮の結論を出してくれるのでついていきやすい。エンタメ的な良さがあるというか、探偵的なロジカルさで謎に接近するので、爽快感もあります。

 令和における仕事のやり方……を勉強する意味で読んだのもありますが、仕事自体は紙の書類を使う、ブースを作ったら試行錯誤しながら組み立てる、経費処理のために議論する……と、割とどこにでもありそうな会社のやり方でもあります。人間関係のイザコザも入っているので、空気の勉強にもなりました。

 そしてシリーズの最新刊では、森若さん……産休です!!!!! 早く帰ってきてください!!!!!!!

『モンスター娘TD ボクは絶海の孤島でモン娘たちに溺愛されて困っています VSラシオン騎士団編』

竹井10日『モンスター娘TD ボクは絶海の孤島でモン娘たちに溺愛されて困っています VSラシオン騎士団編』ファミ通文庫、2022

あらすじ半分:神はまず可愛い少年をお作りになられた。大地は神の手で少年をその場に置かれ思った。『少年ありがたい』『丁度切らしてた』『泣ける』と。そんな次第で、母なる大地は少年を生み出し、少年の世話をするためにたくさんのモンスター(後のモンスター娘)を生み出した……

すごい喋る

「もうこれでどういうノリか分かりますね?」というあらすじです。この小説ではノリノリのギャグがいつまでも炸裂するし、漫才のような掛け合いが続き、仲間(たまに敵もいる)美少女キャラクターが十五人……たくさん登場してワチャワチャします! 道中ややシリアスなところもありますが基本的にオールタイムギャグです。あと小説には基本的に猥雑がないんですが、いやちょっと……単語が……あと、ゲームのほうは各自で状況判断してください!

 神話時代のあらすじは上に書きましたが、ストーリーの概要をパッと説明すると、絶海の孤島ゲシュペンス島に流れ着いた少年エミリアムは、獣神であるヴィヴィヴァーチェ(通称ビビ神)に助けられる。その後エミリアムとビビ神はあーだこーだいいながら島を探索し、スライム娘リンサキュバス娘クロミなどと出会いつつ、島を狙う密猟者やエミリアムを狙う者たちと戦う……というものです。

 また、同名のタワーディフェンスゲームがリリースされています。ジャンルはTDですが難易度が高くなく、強い人のキャラも借り放題なので初心者にもオススメできます。そのため小説→ゲームをプレイするも良し、ゲーム→小説を読むも良し、となっています(プロヘメを観るの先か、読むのが先か、みたいな話ですね)。

 ただこの小説、運営型ゲームの例にもれずキャラクターが数多く登場するので、名前を覚えるのに苦労します! 特に中盤から登場するデュラハン娘プラチナなどは、挿絵が挟まれてない上に、外見の説明や人物紹介が特にないので「えっ……デュラハンということは鎧でガチガチ……髪型は? 服装は? スカートなのか?」と読者が混乱するかもしれません。ゲームではシナリオとともにキャラの立ち絵が出てくるので、漫画を読む感覚で馴染むことができるのですが、小説のみではこれは厳しい。この場合はゲームをプレイしてから本を読むほうがイメージしやすいかもしれません。

 ゲーム本編に話を進めると、長寿になったソシャゲよろしくいろいろ広がっています。宇宙から敵が侵略してくる宇宙人イベントが開催されたり、主人公が旅をする西遊記編みたいなことになったり、なぜか現代で教師になっている学園編も発生してます。ほかのゲームともコラボしていますが……この辺は人気が出ればスピンオフ小説としてどんどん拡張されるかもしれません。

 あとこのゲームでは美少女が数多く出てきますが、一番の萌えキャラは主人公エミリアムじゃないかと思います!!!!! ゲームの話に戻るんですが、基本的に【島を探索する→モンスター娘が暴れている!→モンスター娘が襲ってきた!】という流れなんですが、たまに主人公ががっついて「うおおおお密猟者さんたちを襲います! 皆さん手伝ってください!!」という展開があって、いままで受け身だった人が主導的になる展開って面白いんですよ!!

 ちなみに公式の動画でモンスター娘たちがラップバトルをしてるんですが、なんか……聞いていると中毒性があります! キュワキュワキュワキュワ! お時間ある時に一度聞いてみてください!

『艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆3、4』

内田弘樹『艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆3』富士見ファンタジア文庫、2014

内田弘樹『艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆4』富士見ファンタジア文庫、2015

 ソーシャルゲーム『艦隊これくしょん』を基にした戦記小説。主人公は空母の瑞鶴翔鶴などの五航戦中心で、舞台は同ゲームで2014年夏イベントとして開催された「AL/MI作戦」。海上封鎖を受けている友軍救援のために立案された「AL/MI作戦」、過酷な二正面作戦で艦娘たちが傷ついていく中、瑞鶴はあくまで未来を掴もうと前へ進む。

3-4巻のあらすじ

 普段は独立したお話なんですが、今回は3と4で連続しているので、上下巻ということで一つ。「AL/MI作戦」の立案から作戦計画、関わっている艦娘たちがどのように戦いに身を投じるかが描かれていて面白いです。

 作品はまさに戦記小説で、かつて日本海軍が有していた大和田通信所レーダーピケット艦戦術、他にも軍事用語が散りばめられており、ゲームに異なる側面から光を当てています。ゲーム中では装備品として登場する「三十二号電探」「流星改」も出てきます。

 また、鎮守府の食堂は「豊川」という厨房なんですが、元ネタが気になるところ。ググったら「陸上自衛隊豊川駐屯地のグルメ情報」という情報が出てきましたが、はてさて。

 キャラクターとしては過去史上最多のキャラたちが活躍します。主人公を務める航空母艦瑞鶴はもちろん、姉である翔鶴から、飛龍、蒼龍、舞風、赤城、加賀も登場する他、駆逐艦や軽巡洋艦大淀、深海棲艦側でもかなりの数が出張ってきます。2014年で考えれば殆どフルメンバーの装いであり、多数のキャラクターが入り混じる群像劇が面白い。

 話のコアとしては、史実で起きた「AL/MI作戦」に艦これの世界で出撃しつつ、どのように成功させるかに頭を悩ませます。今巻のメインとして掘り下げされている艦娘は二航戦である飛龍蒼龍ですが、彼女たちは史実としてのミッドウェー海戦の敗北と自分が轟沈した記憶を持っており、今回の「AL/MI作戦」でも大きく議論します。改造・改二などのゲームシステムを取り入れつつ、二人の意見が嚙み合わずにすれ違うことも。

 また、電探砲雷撃戦などの用語は旧日本海軍を踏襲しつつも、艦娘が使う電子パネルやレーダーなどの電子機器が違和感なく出てくる様が面白い。艦これ世界に現実をあまり突っ込むのは野暮ってもんですが、今後はドローンとかHIMARS(ハイマース)を出すとしたら、扱いはどうなるか気になります。

 個人的には、敵攻撃隊からの攻撃を駆逐艦舞風のレーダーピケット艦戦術によって防ぐくだりが面白かったです。艦攻や電探を操るのは艦娘でないとできませんが、ステップを踏みながら攻撃隊を指揮するスタイルを取れるのは、人間の身体と駆逐艦の能力を備えた舞風でないと不可能なやり方でした。面白かったです!

 今回は以上です! 次回は……読書会で書き溜めていた感想も書きたいですね! あと、この前投稿した『マジでやってんだ』の感想戦も執筆したいところですが、時間がない! 書くしかない! よろしくお願いします!

《終わり》

逆噴射ピックアップ2026(20260217)

(2026年2月13日の記事の再掲です)

 

 

 2月! それは選挙の月でもありバレンタインシーズンでもあり大量のガチャに……エンドフィールド……トリッカル100日……ブルアカ5周年……どうして12月の忙しさが続いてるんですか!?? 

 今回は逆噴射2025作品のピックアップをしていきたいと思います。

(たぶん)逆噴射作品は全て読んだわけですが、惚れ込んだ小説のうち10本をピックアップしました。

 なお、最終結果発表と審査員コメンタリーはすでに発表されています! でも俺には……既存の価値観なんて関係ねえぜ!!!11!!!!

 それでは始めたいと思います。

1:思想やさん

 AI・メディア汚染を避けるために純粋な思想を頭に取り入れるため開発された思想カセット(たぶんタイパやコスパ概念も関係していそう)。思想が強いとかたまに聞きますが、カセットを挿入することでまさにそうなっており面白い! 発想が面白く、長編や連作としてどこまでも展開しそうな芯の強さを感じます。

 現代では哲学雑誌や文芸誌に多くの哲学者の文章が並んでいます。社会学や心理学でも多くの人々がいわゆる「思想」を備えています。いま世に出ている彼ら彼女らの思想を直接取り入れたらどうなるんだろう……と好奇心も出てきます(倫理的にヤバい)。

 人の知識や思想をホイホイ取り入れられるとなると、人間が机に向かって学習した知識……スキル……もっと突っ込むと、魂などはどこにあるのか? 思想の入れ替えに脳科学は果たしてついていけるのか? えっ明日から思想リスキリングかよ……ヘーゲルとヒュームだってさ! みたいな会話が日常になりそう。新しい哲学問題が発生するぜ!

 それでいてこの「純粋な思想」も人の手でカセット化されているわけであり、これを加工する会社はどんなところなんだ……業界は……どうやって思想自体を抽出しているんだ……と、かなり考えさせられる作品。

 つらつらガジェットについて書いたわけですが、先輩と後輩が『思想やさん』へ向かい、そこで後輩が不穏な行動を取るストーリーとなっています。「先輩の思想、私にくださいよ」とあるんですが、先輩の思想をもらったら後輩の自我はどこに行くんですか!!??? 先輩の意志とか消滅するんですか!?? と思いました。

 続きが気になる作品です!

2:灰色の魔炮使い

 ファンタジーの世界であり、ガンスリンガーのような女性魔法使いアッシュカリンという女商人の話です。

 カリンの認識では武器は魔法杖ですが、我々が見た感じ、かなり拳銃やライフルっぽいものをアッシュは備えています。格好いい。

 若干物足りない点としては、最初がアクションをしていて良い加減だったのに、最後のアクションではやや刺激が少なめになったところ。電光石火の早撃ちというのは良いのですが、もう一声欲しい。

 いまのところアッシュ、カリンの二人(あと葬儀屋)で話が完結しているため、ここからどう小説を発展させるかも考えどころになります。

 個人的にはカリンが好きで、「すびばせんアッシュさあん!」のところで一気に彼女の性格が分かったな……と思いました。「マジかよ!と言いかけるのを、カリンはどうにかこらえた。」とある辺り、カリンは本心ではそれほど丁寧キャラでないこともわかります。頑張れカリン! もうちょっとガッツを持つんだカリン!

3:【逆噴射小説大賞2025】ピクトグラム、恋を駆ける

 読んでいるとどうやらピクトグラム……非常口とかにいる緑色の人物が主人公のようで、ピクトグラムは男性であり、主人公の友達である女の子に恋をしているとわかってくるのですが、浅薄ながらピクトグラムやノイラートについて無知だった自分に気づきます! オットー・ノイラートは1882年12月に生を享け、1945年12月に寿命を全うした……へえ……(Wikipedia調べ)

 いろいろとピクトグラムの生態には疑問が生じるわけですが、一番難しい問題は「ピクトグラムの恋愛と人間の恋愛はイコールなのか?」だと思いました。

 記号接地問題として「人間が言うリンゴは、AIが言うリンゴと果たしてイコールなのか?」という問題があるのですが、それに似てるかもしれません。

 ピクトグラムは人間のように少女に恋をするのか、あるいは人間がネコやイヌに恋をするような恋愛をするのか……それもまた、このピクトグラムの語りによってしか我々は理解できません。「そこに座れ。話せば長くなる。」というように、やはり話が始まれば中編や長編のような物語が展開されるだろう……と考えました。作者の方が博覧強記で、ヤン・ポトツキみたいなめくるめく長編を期待しているのもありますが、実際どうなるんでしょうか?

4:【必殺保証】 #逆噴射小説大賞2025

 ダークウェブの巡回中に「ひっさつライフル」の項目を目にしたロウジ。彼は単なるいたずらだと決めつけたものの、後日、ひっさつライフルは在庫切れとなっていた。後、3500メートル弱の距離を超越してホテル内の防衛大臣・外務大臣が狙撃され、暗殺される事件が発生する。取り調べを受けていたSATの狙撃手ロウジは脱出を決意する。

 お、面白い……! となる作品。最初の数行は様子が読めずに、「シンプルな方向性なのかな」と考えていたのですが、在庫切れの辺りから急速に物語が転調してきました。取り調べでの応酬はセリフしかないにも関わらず臨場感があり、カメラワークとしても効果が非常に大きい。

 物語の出口ではロウジの情報が明らかになるとともに、ロウジがこれからやろうとしていることも明らかになります。ただ犯行につながる手がかりが、取調官の話と「ひっさつライフル」しかないので、ここからどう転がしていくかはかなり難しいところかもしれません。しかしバシッと最後の一行でエンタメが決まってくる。これはかなり面白い作品ですよ!

 

5:二十代目首斬り浅右衛門の失態

 最初の一行を読んで「なるほど時代劇なのだな」と思わせてから「どうしたのよ?ビームセイバーの試し切りで何かあった?」に入ってしまいびっくりしました。急な舵取りの変更にびびったわけですが、江戸SFとして読むとなかなか面白い。

 そして一行ごとに世界観が拡張されていくのがわかります。試験室、魑魅魍魎の復活、ライダースーツに中国、果ては米軍まで出てきている。どんどんリアルタイムで拡張されていく具合が面白い。とはいえ固有名詞が多いものの、この国でいう首都(たぶん江戸?)や、本人たちの衣食住や生活している感じについてもう一つ欲しいところ。なんか……牛や豚はダメなので、馬ステーキを食べるとか。あるいはそばを食べてからシュークリームを食べるとか(食ばかりになってしまった)。

 私としては、世界観が江戸時代から動いていないと見せかけて、未来のガジェットをとにかく江戸に引き寄せている感覚があります。SFや未来要素はかなり詰め込まれているので、ここから発展させるなら文禄・慶長の役や源平合戦みたいな、更に過去に遡った話を取り入れるのもアリかもしれません(ちょっと用語が多いと胃もたれするかもしれませんが)。




6:『CHATO "wabi_sabi_protocol"』

 茶道SF小説! 鉄槌をドロップアウトと呼んでいたり破調をオーバーライドと呼んでいたりと、刺激的な作品。

 コードの画面も利用していくなら、従来の縦文字の本よりも、横文字を採用したUIが合いそうです。引用やコード文をふんだんに使ったnote仕様となっており、こうしたUIテクニックを使い続けるのは非常に凄い。

 ここから小説を発展させる方法の一つとして、円城塔さんのやり方を踏襲するテクニックがあります。円城塔さんが発表された歴史SF『去年、本能寺で』があります。

 この作品は歴史上の人物や概念をトコトン異化しようとする作品で、例えば富士川の戦いだと「ザ・バトル・オブ・フジ・リバー」にしていますし、征夷大将軍に至っては「コマンダーインチーフオブジエクスピディショナリィフォースアゲインストザバーバリアンズ」と表記されてます。日本語の歴史小説なのにムチャクチャ新しくてひっくり返りました。

 ルビの方向性としてこれくらい突き詰める方法も一つの手なのですが、とはいえ茶坊主に上のような極端ルビを振ってみたら「ティーサーバーアテンダンツインサムライハウスホールズ」となってきます。この辺りは極端ルビにしても読者を置いてけぼりにしない世界観の構築が必要になってくるため、かなり技法的に難しく、やはりUIを活用する方向から小説世界を発展させたほうが良いかなと思えます。

 

7:青春をもういちど

 主人公は二人の少女。アスカルナをめぐる話で、いなくなったルナを探すためにアスカが旅に出ます。途中で「星外軍」とあることから、これはSF作品か宇宙小説なのか……と推測できますね。わたしはこれを読んで『少女終末旅行』を連想しました。
 
 途中で出くわした老婆が急に攻撃をしかけてきたのは驚きましたが、「なるほど、ゲームでいうシンボルエンカウントみたいな敵か」と思ってアスカが迎撃するのを読んでいました。逃げていったあたり、再登場するかもしれませんね。

 そして山頂には「機械と肉の混ざりあった赤い塊」があり、アスカはこれがルナが残したものだと直感します。ルナは……死んだのか……? そしてそこからユニコーン! メガロポリス! ハンディ解体機! が出てきます。ハンディ解体機は何を解体するのかと考えましたが、レーザーガンみたいなものと推測しました。

 作品にはかなり余白があり、想像の余地があります。ここからどう続いていくかは想像するしかありませんが、いずれルナには戻ってきて欲しいな……と思いました。

 

8:受験番号564(コロシ)

 センター試験を舞台に物理的に戦う学生たちがメインです! 目つぶし! カンニング! 蛍光灯破壊による環境変化! 環境利用闘法!

 エンタメとして強みがあります。エンターテイメントの作品なので、読者は現実にある共通テストや試験の恐ろしさを感じることなく、「オッそろそろ中足→しゃがみP3発→弱ジャンプ殴りのハメ技コンボが見られるかな~」と、さながら格ゲー大会のEXOを鑑賞する感じで読むことができます。

 韓国や中国ではカンニングによって、懲役刑などが課せられてパクられた人の人生が台無しになる……という陰惨な現実もあるので、それを利用して、「俺は大陸の地獄を勝ち抜いてきた」みたいな海外プレイヤーも参戦させてほしい。センター試験そのものをハッキングする意味でハッカーやクラッカーも配置できそう。

 ネタとしてならここから自衛隊を投入するとか、隣の学生が「シッ! 私はCIAよ。いまは警視庁の身分を借りて潜り込んでいる」とかもありそう……ですが、あまり膨らませても良くないのでこの辺で。

 センター試験という枠の中にある以上、基本的には密室劇として進行するタイプの話だと思います。ここからスピーディーに畳むのか、それとも広がっていくか楽しみです。 

9:JAPAAAAANNNNN!!!!!!!!!!

 すごい……タイトルだけ読んだらノリの良さしか見えてこないんですが、中身を読むと「まさしくその通りです!」と頷いてしまう勢いがあります。小説のテンションが高い! MV性! どこか複数のCDアルバムをリミックスした破天荒さが面白い!

 "# JAPALiminal Space"はまさにリミナルスペースで時事ネタを取り入れた概念。いまや日本の空港はリミナルになった……

 そして謎も多い。エリザヴェスがステルス機で日本へ来た理由、そもそも日本へ来た理由、地中から姿を現した怪獣の正体とは、そして「コニッチワー!」とは……

 ハチャメチャなノリで動き回る女性は今回はあまり見ていないかもしれませんので、真新しさもありました。
 

10:路歩くひとびと

 東京駅へと向かっていたは見知らぬ大通りへと迷い込んでいる。タコス屋があり、門へと歩きつくのに三か月もかかる路であり、歩き疲れたら泊まる家も暮らしもあるところだ。生計すら立てられる路に入り込んだ私はかれこれ一ヶ月も歩いている……というストーリー。

 どんどん世界観がゲームのように拡張されていくのですが、文体が白昼夢に近いものがあり、激しいエンターテイメントやシリアスな文体がひしめく逆噴射小説大賞において、ややのんびりと読んでいられる稀有な作品。

 主人公である私と東京駅がある現世をつないでいるのがタコス屋なのですが、このチョイスもトルコケバブ……韓国のアジュンマがやってる食堂……みたいに絶妙にのんきにさせてくれます。何かしら大きな異変が起きているのに、結果的に主人公は牧歌的な世界観へと馴染んでいく。とはいえ主人公も何かを返却するために動き始めるわけですが、読んでいて最初に感じたのは原風景や懐かしさでした。

エンドロール


 以上で10本をピックアップしました! なお逆噴射作品は「#逆噴射小説大賞2025」と検索すると、ライナーノーツやピックアップ記事を含めて300作品以上がヒットします。つまり……私が取り上げた量は……あまりに少ない!

 それでいて他の方も多くのピックアップ記事を書かれており、逆噴射には本当に色とりどりの作品があります。もしこの記事がきっかけで逆噴射小説大賞について知った方がいたら、ぜひご一読を!

 今回は以上です!

《終わり》

年末と短評(20260107)

 

(2025年12月31日に載せた記事の再掲です)

 クリスマスが終わっていき年末に入りました。メモリ価格の高騰やクリスマスによくわからないトラブル! 強風! 歯医者の定期健診! 換気扇の故障! どうして年の瀬にばかり用事が溜まるんだ!? いやコミケには参加していないんですが……

 今回は一年の終盤ということもあって本の寸評をしていきたいと思います。

英雄コナン全集1


ロバート・E・ハワード『英雄コナン全集1 風雲編』新紀元社、2022

 魔術と剣が共存していたハイボリア時代、キンメリアよりやってきた未開人コナンが戦っていく作品であり、短編集です。コナン若年時代の「氷神の娘」「象の塔」「石棺のなかの神」ほかを収録。

「氷神の娘」の出だしからしてかなりハードです。場所は戦場跡らしく死体が各所に放置されています。それでいてヘイムドゥルという戦士がキンメリアのコナンと死闘を繰り広げる……(ヘイムドゥルはすぐやられます)。そして文章自体も重くて硬い。かぶと寛衣かんい嚝野こうや麝香鼠じゃこうねずみなどの難読漢字もゴロゴロ出てきます。「お……重いぜ! この文章を読み込むためにはものすごくカロリーを消費するしかないッ!」となっていました。コナンの戦闘や悪漢たちの暗躍、サブキャラクターたちの活躍が余すところなく描かれているのですが、その分一文一文が重く、三十分かけて三十ページ読むのがやっとです。とはいえヒロイックファンタジーの本流ということもあり、あらゆる場面にパワーが満ち溢れている。あとラヴクラフトとほぼ同時期に連載されていたようです! マジで!??

 エンタメということもあって、最終的にコナンがあらゆる種類の悪と戦っていくことになるのですが、とかくヴィランのバリエーションが豊かです。邪悪な猿人、獰猛な海賊たち、砂漠の男、巨大な蜘蛛、魔術師……主役はコナンで不動なので、ストーリーテリングや悪人に相当のリソースが振られています。個人的には「魔女誕生」に登場したサロメヴィランとして完成されていて高評価です。生まれた時から魔女であり、強靭な生命力を持つ上に、人々を苦しめることに寸毫の躊躇もない人物……

 しかし主人公のコナンがとにかく強い。十字架に磔にされたり猿人と戦ったり、物凄く高い塔に盗みに入ったり、かなりいろいろなシチュエーションでアクションをしているのですが、全てをこなしているし全ての戦いに勝ちます(苦戦はするんですが)。その代わりといってはなんですが、コナンの性格が「素直」「礼儀を重んじる」「乱暴者だが不義理はしない」などの主人公の素質を身に着けている。そのためコナンのキャラクター性にワクワクしながら、存分にアクションを楽しめます。
 
 まだ1巻しか読んでいないのですが、『英雄コナン全集』ではコナンが王になるまでを描かれているようで楽しみです。とすると、コナン……王になっても前線で戦うんですか!? ロードオブザリングみたいに!?? 

ラヴクラフト全集2

 H・P・ラヴクラフトラヴクラフト全集2』創元推理文庫、1976

 クトゥルフ神話の元祖である作品集。「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」「クトゥルフの呼び声」「エーリッヒ・ツァンの音楽」を収録。

「チャールズ・ウォード」では地の文がナレーションっぽいのでドキュメンタリー映画を見ている心地があります。とはいえ読んでいくと親しみとパワーを感じるもので、「そして、本来の姿でないとすれば、どのような形状であろうか? 《塩》だ! 《塩》をおいて、なにが考えられよう。」の文章に非常に迫力があります。そして「チャールズ・ウォード」はクライマックスのカタルシスが強い。読んでいてかなりヒリつきます。

 また「チャールズ・ウォード」においては時系列が現代→過去→現代と行ったり来たりしているのですが、現代が1910年代で過去が1770年……とかなので、パルプ小説だけでなく時代小説の文脈も感じられます。後半は謎解きの要素もちょっとあるので、ミステリー小説の文脈でも読めるかもしれません。

 途中でヘルメス・トリスメギトゥス『魔法哲学ユダヤ神秘主義者の『光の書』……などの参考書籍が登場するのですが、どれだけの本が実在するのか気になるところ。 簡単に検索したところ、『光の書』は、

エルンスト・ミュラー『ゾーハル〈新装版〉』 カバラーの聖典』2020、法政大学出版局

 
 が近いかなと思いました。実際にどれだけの書籍が実在しているのかはわかりませんが、フィクションでは物凄い量が出てきそうです!

 後半、ウィレット老医師が地下を探索するくだりは冒険的でエキサイティングであり大変恐ろしい。私だったら気絶して絶対中に入れないだろうな……という確信があります。

 発見として、ジョゼフ・カーウィンは「イギリスや大陸から移住してきたのかな」と思い込んでいたのですが、序盤で「セーレムの町にあの有名な魔女狩り騒ぎが……」とあったので、アメリカ発の存在だったようです。つまりアメリカ出身。事件の根本にはクトゥルフという人類に害をなす神々がいるのですが、彼はアメリカ発の悪だったとわかりました。面白い!

来年へ

 
 今年はいろいろありましたが――逆噴射小説大賞とかトワイライトウォリアーズがアマプラに入ったこととか――諸行無常であり多くの時間が過ぎていきました。人生は短く、やれることは少ない……『ギケイキ』の最新話もまだ追えてません。
 
 ひとまず来年! 来年はまた小説を読みながらいろいろとやっていきたいです! 逆噴射ピックアップもやっていきたいです! 物凄く寒くて風も強い季節なので、皆様も体調を崩さないようお気をつけください。

 また今回は書評でしたが、次回は2025年にプレイしたゲームソフトトップスリー(『グノーシア』『マルコと銀河竜』など)を書ければいいなと思いました。うおおおお! やっていくぜ!!

 今回は以上です。また来年もよろしくお願いします!

《終わり⦆

C106お疲れ様でした(20250820)(復)

 夏コミ! それは戦場に猛者たちが集って本とか国鉄全線乗車駅とかタペストリーを購入するために我先にと争う大型コミックイベント! エロ同人もいいですが、私は論文の手売りとか土管写真の販売も好きです。

 

 

 

 とても信頼のもてる造り

 

 

 

 こういう……評論? 情報コーナー? をぶらぶら回りたい

 

 そんな私はコミケ不参加でした。いろいろと刺激がもらえるイベントだったと思うので、残念です! とはいえ悔やんでいても仕方がないので、自宅でコーヒーパーティーをして盛り上がりました。一人で。

 

川上稔境界線上のホライゾン Ⅵー下』電撃文庫、2013

 

https://www.amazon.co.jp/GENESIS%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E5%A2%83%E7%95%8C%E7%B7%9A%E4%B8%8A%E3%81%AE%E3%83%9B%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%BE%E3%83%B3-6-%E4%B8%8B-%E9%9B%BB%E6%92%83%E6%96%87%E5%BA%AB/dp/4048916246

 

 パーン! ドカーン! と常にどこかで誰かが暴れている一冊! ぶっちゃけ1057頁あります! 長いっちゃ長いのですが、川上さんの作品はたいてい900枚とか1000枚に至るので、「オッ大将今回もデカい造りだね~」と納得してしまいます。納得していいのか?

 

 あらすじを含む大雑把な内容は、「いろいろあって滅んだ地球に復興した仮想日本にて、主に戦国時代に活躍した武人を襲名した少年少女たちが、一人の少女の進退をめぐって、同じく世界史で活躍した少年少女(たまにおっさんや美女もいる)と戦いつつ、日本史と世界史の事件を平行して進めていく話」です。伝奇ジャンルではないですが、よくFate以降にこれを出す度胸があったな……といまさらながら驚きます。

 

 ライトノベルというレーベル上の都合もあるのでしょうが、全キャラがイキイキしてます。進路相談や恋愛関係でけっこう悩むんですが、「ウチらがフォローするし大丈夫でしょ! まあしょうがないっしょ!」でだいたい解決する。とあるキャラが明らかにコミュニケーションに失敗しても、別なキャラたちが素早くフォローしたり、根本的なところでは最初から正解しているルートに入っているので、最終的にハッピーエンドになります。いや続き物でバッドエンドとかなったら大変なんですが……

 

 そういうノリで進むホライゾンですが、今作は目玉の一つに(1000頁あるから目玉も多いんです)、人狼女王最上義光などのカーチャンお姉さん属性、巨乳の女性たちが戦います。オタクの高齢化に伴って人妻、女性たちが脱いだり活躍したりするのが流行っていますが、今回はそこにジャストミートしています。2013年の時点で人妻の魅力をドワーッと出せているところが慧眼。

 

 戦闘については、「パリ・小田原城征伐側」と「武蔵生徒会の冒険」に分かれるし、場面転換もけっこう急なのでわかりにくい場面があるかもしれません。そういう時は気にしないで先に進みましょう。終わる頃にはだいたいわかります。

 

 あと勢力に「P.A.Oda」というのがあるんですが、織田信長とか織田信忠が一切話に出てこないので、かなり気になります! ゲームで見るように第六天魔王として出てくるのか、別な形で登場するのか好奇心がそそられますね……

 

 そしてハッサン。お前なにげに強キャラだったんだな! 美術のビジュえもんみたいなビジュアルだったのに!

 

《終わり》

 

 

芥川賞と直木賞受賞作無し(20250718)(復)

 いつもお世話になっております。今週一番ビビった記事は……これです!!!!!

 

www3.nhk.or.jp

 

 えっ、出ないんですか!!!???? と驚いた記事です。

 とりあえず出ないものを嘆いても仕方がないので、個人的に好きな芥川賞直木賞作品を挙げたいと思います!!!


芥川賞

books.bunshun.jp

 

 

 超利己的な就活浪人生が介護に挑む作品。筋トレを「まさにスクラップアンドビルドである」と形容したところが面白い。

 

 直木賞

product.rakuten.co.jp

 

 映画から入りましたが、小説版だと石神の心情がかなりねじれているのが伝わってくるミステリ作品です。ちなみに最近は『名探偵の掟』を読んでいるので、「こういうミステリを書いているが作者はかつてミステリにおけるメタ認知を駆使していたんだな……」と考えてます。

 

 特に賞とは関係ないんですがこちらも面白いです!

books.bunshun.jp

 

「激怒し続けながら生きるしかない人間」「告発文を書いたが家族には相手にされずむしろ虐げられる主人公」「時間が経つほど解決せずにこじれていき当事者にとって悪化していく事件」などが描かれており、面白いです!

 

《終わり》

 

 

祝ダガー賞受賞(20250711)(復)

 王谷晶さん、ダガー賞受賞おめでとうございます!!!11!

 

web.kawade.co.jp

 

 私は『ババヤガの夜』は『文藝』の雑誌で拝読しました。「エンタメっぽくもあり純文っぽくもある良い作品があるな」という感想でしたが、四年の時を経てこうして受賞しているのですから嬉しいことです! あと生卵を飯にぶち込んでかっ食らうとか、中華料理屋でメチャクチャ大盛りを頼むとかのご飯の描写がおいしそう。

 

 また私は『文學界』で王谷晶さんが連載されているエッセイ『鑑賞する動物』が好きでよく読んでいます。『ジョン・ウィック:コンセクエンス』とか『ザ・キラー』の批評を面白く読んでいるのですが、なぜなら私はこういう映画を見ても「ああ面白かったね」で終わるタイプの人間だからです。

 

 王谷さんのように映画の勘所を解説したり、アクション殺陣の指導について語れる人がいないので、こういう評論を出してくれてありがたいと思います。あと、配信サイトにない映画の情報も得られるので、純粋にその点も勉強になります。

 

youtu.be

 

 

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 エレグ来るって本当ですか!!!!??????

 

 

 

 

 

読書の日記(20250704)(復)

 7月! 我々は暑くて溶けていった……後にはアイスクリームとか本の残滓とかが残り、なんかいろいろなことがあり……春と梅雨は消えていきました……

 

 遅まきながらこの本を読みました。明治時代の作品の文学論で、トンチキ作品をクールな地の文でしばいていく批評本でもあり、大変おもしろかったです! 簡単に紹介します。

 

『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』

 

 

www.kashiwashobo.co.jp

 

 

 本の中身を見てみると「弥次喜多宇宙旅行に行く『宗教世界膝栗毛』遅刻で日露戦争に参加できなくなる『露西亜がこわいか』主人公が焼酎と蟹を食べすぎて死ぬ『南京松』」……と、ちょっと見ただけでお腹いっぱいになる内容です。

 

 ゲラゲラ笑いながら読んでいたのですが、特に好みだったのは第6章の「〈最初期娯楽小説〉の野望」でした。猿を殴り殺していく僧侶「拳骨和尚がやってきた」、インドで強盗団を殴打してパリで伯爵夫婦を惨殺する「ハイカラを討伐しよう」、海賊組織を壊滅させる「アフリカ人と帰国しよう」などがあります。凄すぎる本でした……

 

 

 英語版ウマ娘に脳破壊された哀れな外人たち……「うまぴょい伝説」が「Umapyoi Legend」とそのままの英訳で笑いました。

 

《終わり》