がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

巌窟王、2004

第二回目の今回、第三話と第四話をレビューします。DVDの伯爵は非常に格好良いんですが、アルベールが冴えないのはなんでなんでしょうね、呪いでしょうか。



第三幕『5/22、嵐』:宇宙から、月から、舞い降りる。
 ルナで伯爵と別れて数ヶ月、パリへ戻ったアルベールたちは、城壁に囲まれた平穏な空間で無為に過ごしながら、伯爵と会う約束の日を待っていた。新しく見える友人と、嵐と雷雲と共に、やってくる黒衣の貴族。
 物語の華であり骨子となりうるメンバーたちの登場。アルベールたちの友人、許嫁、フランツの知己。彼らの友人を含めて数多くの人々が幕を広げてやってきます。もちろん男の娘のペッポもアルベールを追ってやってきたわけですが、ペッポさんがどのようにして屋敷に潜り込んだのか、その手腕を想像する度に胸が熱くなり夜も眠れません。つまり昼眠ります。
 そして出てくる度に底が知れなくなっていく伯爵の立像。彼を写したカメラが、彼を残したボイスレコーダーが誤作動を起こす挙動には、彼が文明から背を向けたようにも、文明そのものが伯爵から背を背けたようにも見受けられます。あるいは伯爵の中に潜む物が。
 終盤に成るのはアルベールの両親との会談――父親フェルナンや母親メルセデスの紹介と、それを見つめる伯爵の視線、それから母親の驚愕にも取れる表情。
 伏線という糸を大きく底に落として、それはどれほどの衝撃となるのか。以下次号。


第四幕『母の秘密』:会談は踊り、言葉も踊る。
 伯爵を招いての食事の後、アルベールはその夜、母親が自分の知らない男が写っている写真を持っている場面を目撃し、動揺する。それを試すようなペッポの言葉に苛立ちをも覚える。その後、招待の返礼として伯爵はアルベールと友人たちをシャンゼリゼに在る自分の屋敷へと呼ぶが、そこは黄金と夢幻が混ざった場所で…………
 今回は会話メインで、物語そのものより、人物たちの心情の動きの方がより感じやすくなっているとも言えます。少年アルベール、父親フェルナン、それから母親メルセデス。伯爵と両親による会談は泡のように柔らかく弾け、真意を、底を知らぬはアルベールただ一人。
 終盤で披露される、伯爵の屋敷造形は見事でした。夢そのものを徹底的に模したような、豪壮と不思議と不可解と繊細を混ぜて黄金で練り上げたような、幻影とも異形とも見えにくい不思議な空間が展開されます。彩りに彩りと彩りを重ね、積み重なるのは伯爵の模様、あるいは人々の模様。
 ペッポにそそのかされて海賊服を着込んできたアルベールを置いてけぼりにして、次号へ続く!

巌窟王 Blu-ray BOX

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