がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

巌窟王、2004

第五回。そろそろ動きが重く激しくなってきましたが、アルベールに良い所があまりありません。


第九幕『闇色の夢を見た』:まだペッポさんの血沸き肉踊り脳狂う大活劇が始まりませんか?
 失神したダングラール夫人を介抱している最中、フランツは伯爵の額に浮かぶ奇妙な紋章を目撃し、また『巌窟王』という言葉を聞く。アルベールは設置してあった水差しから偶然水を飲んだことから嘔吐して失神し、看てもらった伯爵から原因が毒であること、水差しが置かれていたのはヴィルフォール家のテーブルであることを知り、陰謀と悪意を知る。夜会後、ヴィルフォール家へ急ぐアルベールたちだったが、既に魔の手はヴァランティーヌに及び、彼女は毒を盛られて昏睡状態に陥っていた。
 異様な存在感を持って登場した貴族アンドレアがとてつもない存在感を以ってアルベールに迫り来るのですが、あまり好みでないキャラなのでほどほどにしておいて。今回の見せ場はフランツが語る、愛情についての考察でしょうか。彼が愛についてどのように考えているのか、アルベールに対する想いとは、また人を幸せにすることについて語るのですが、何かしらの喩と示唆を湛えつつも、充足している彼の想いは何かこそばゆくほのかであります。
 いよいよ動き出した陰謀と、自身とはまるで異なる闇の子の存在を感じる伯爵の場面も面白いものです。倒れる淑女と悲鳴を背景に、雷雨を音楽にして聳える怪奇の化身は、それだけでお腹がいっぱいになってしまいそうなほど劇的です。いよいよ始まるサスペンス。くだらないロマンスが粉砕されるのです!
 で、あの、ペッポさんは…………


第十幕『エドモンからの手紙』でた! ペッポさん来た! これで勝つる!
 毒により昏睡状態に陥ったヴァランティーヌ。身の安全を考えたマクシミリアンは、彼女を自分の実家のマルセイユで療養させようと父親ヴィルフォールに掛け合うが、素気なく拒否される。一方モルセール、ダングラール、ヴィルフォールら名家の元にエドモン・ダンテスという名で葬儀の招待状が届き、眼にした三人は一様に血相を変える。場所の教会にやってきた三人、不審に思い尾行したアルベール、そしてもう一人の招待客、ネズミのような顔をしたカドルッス。そこに安置されていたのはひとつの棺。マクシミリアンはヴィルフォールが家を空けた隙を見計らい、ヴァランティーヌを勝手に連れだそうとするが…………
 マクシミリアン=ヴァランティーヌ編、あるいはヴィルフォール家編も後半戦です。エドモンが何者なのか、三人は何を隠しているのか(原作を読んであるかそうでないかを置いておいても、明らかな隠蔽とそれに付随する感情の流れは、ドラマティックです)、悪臭のように憎悪が漂う館からマクシミリアンたちは脱出できるのか。なかなかどうして物語はスリリングになってきますが、個人的には伯爵が登場したシーンで、登場と同時に周りの家具みたいなものが吹っ飛んだあたりがお気に入りです。伯爵のカリスマの前には並大抵の家具は耐え切れません。
 いつ伯爵が黒鍵を投擲するようになるか、あるいは666の獣を使役するようになるのか気になって仕方ありません。あるいは奉納殿六十四層の使役など。

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