がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

シャンプーをしているとき、後ろがすーすーするのって気にならない?

私は幼い頃、暗闇の中を歩くことが怖くてたまりませんでした。
例えば、修学旅行の肝試し。
例えば、出てくるのが遅くなった友人の家からの帰り道。
例えば、夜トイレに行くとき。
気がつけば、ちらちらと周りの様子を確認している自分に気がつきます。
暗闇の中に何か浮かんでいないか、誰か怪しい人はいないか、と。周りの人に臆病と蔑まれても、決してそれをやめようとはしませんでした。
一体あの異様な黒の向こうに何が潜んでいるのか、幼い私には検討もつきません。
ただ、何か想像を絶するような恐ろしいものなんだ、ということぐらいしか考えていませんでした。
宙を浮かぶおぞましい顔つきをした生首か。
足をひきずりながら向かってくるところどころを腐らせたゾンビか。
不可思議なほど痙攣を起こしながら邪悪な面持ちで歩いてくる骸骨か。
多分どれにも当てはまらないのでしょう。それよりも、気が狂うほど恐ろしいものに違いありません。
ただ、幸いなことにそれと出会ったことはありません。当たり前ですね、度が行き過ぎた子供の妄想なのですから。
けど。
今でもたまに、暗闇の向こうを眺めているとき、こう思います。
もしもそれを見てしまったら、自分はどうなるのだろうか? と。
例えば真夜中にトイレに行くとき、薄暗がりの中をおっかなびっくり歩いていき、いつものようにちらちらと周りを確認します。
そして。いつもとは違うものを発見するのです。
形容しがたいほどの禍々しさを備えた暗闇の中からこっちを見つめている何かを。
身体が凍りつき、視線がその何かに釘付けとなります。一気に口の中が干上がり、喉の辺りがカサカサしてくる感触すら覚えるかもしれません。
一度、二度、まばたきをします。
そうすれば自分が見ているものがただの妄想のようなもので、まばたきを終えた瞬間にはただの暗闇に、害を及ぼそうとしないものに戻ると。
ですが、そうなりませんでした。
それはこっちの考えていたとおりにはならず、ただじっと眺めています。じっと。
思考が限界を迎えたとき、果たしてどんな行動を取るのでしょうか。悲鳴をあげるのか、目の中に指を突っ込むのか、一目散に逃げ出すのか。
ただそれが出てこないようにと祈るしかありません。自分が狂わないように、心を壊されないように。
果ての無い向こうから。想像の及ばない暗闇から。
私は幼い頃、暗闇の中を歩くことが怖くてたまりませんでした。
そしてそれは、今も変わっていません。