がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

鋼鉄の少女たち

鋼鉄の少女たち (1) (角川コミックス・エース)
今回紹介するのは、既に仮面の男さんが取り上げておられる『鋼鉄の少女たち』という漫画ですが、一言物申したい、という思いで私も紹介することにしました。

目を背けたくなるような現実の中で、時にどんな人間よりも人間らしく、時に強かに生きる少女の姿は、残酷性の中で昏く染まり、或いは眩いくらいに輝きもする

多分、ここが仮面の男さんのこの漫画に対する感想を、一言で纏めている部分なのだと思います。そして、私も仰る「内容」には同意します。
ただ、言い方に違うモノを感じたというか――
と、言うのは、こんな地獄絵図のような世界の中でも、彼女たちは強く生きてるんだよ。何て強く、雄々しい少女達なんだ。といった印象を、私はこの漫画からあまり受けなかったのです。
むしろこの漫画のキモは、徹底的にキャラを突き放した、ただ事実のみを描写していくさめた視点にあると思います。
この漫画においては、作者さんのキャラに対する思い入れが殆ど感じられません。そして、そこが凄いところだと思うのです。
例えばメインキャラが殺し殺され、強姦される。そう言ったシーンを描くときでさえも筆致は穏やかで、作者さんは自分が造り上げた「娘たち」を苦しめることに、何の感情も抱いていないかのように感じられます。
そして、そういう描き方をされた世界の方が、むしろ変に拘りを持って描かれた世界よりもリアリティを持っているように、私は感じるのです。
この漫画の世界は、戦車中心という戦争の内容こそ第1次世界大戦を彷彿させるものですが、国家の力関係やイデオロギー等は、むしろ現代社会にそっくりとさえ言えるでしょう。
争う「王国」と「連合」、その争いに巻き込まれ、蹂躙される「公国」、連合の影に隠れて漁夫の利を狙う「帝国」は、西欧とアメリカ合衆国、東欧(西アジア)、そして日本にそのまま置き換えられると思います。
登場する人間達も(勿論エンタメであるが故の味付けはありますが)私たちとそれほど変わらない、普通の感情を持った人たちのように私には思えました。
何が言いたいかというと「萌え」だとか「感動」だとか「打ちのめされる」だとか、そういうある種純粋な感情を求めてこの漫画を読まれるのなら、ちょっと違うんじゃないかな、と。
あるのは徹底したリアリティだけだと思います。
この漫画にも「血」だとか「英雄」だとか「運命」だとかの要素はありますが、正直上手に生かし切れているとは思えません。と、言うより、この漫画の在り方自体がそう言った要素と相容れないのでしょう。