がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

ルカ

ルカ―楽園の囚われ人たち (電撃文庫)
出会いは偶然だったのに、非常に大きな印象を残すナニカというものはあります。
基本的に電撃とか富士見の文庫は読まないのですが、些細なキッカケで読むことになったこの本は、私の心に強烈な爪痕を残してくれました。
さて、この本、構成的には若干書き足りない部分もあり、キャラクターもステレオタイプなところがあるのですが、その視点の奇抜さと、何より滅亡へと向かう箱庭的な世界の哀しさの描写が見事な作品です。
文章力は、かなり高い。ちょっと羨ましいです。ただ、日常を描くシーンになると突然とってつけた感じになるというか、平凡なドタバタコメディになってしまうのが残念。
いや、全体として見れば、日常シーンを描くことで世界の哀しさがより表現されるのは分かるのです。ただ、その日常シーン単体としてはお粗末ということで、ここら辺は作者さんが無理して書いたんじゃないかな、と。
何て言うのでしょうか。私は星新一の小説が好きなんですが、彼の書く数ページの小説をラノベ風味に数百ページで書き直した、という感じです。もちろんそれだけに留まることはなく、星新一さんが乾いた視点で物語を書くのに対して、こちらは乾いた中にも非常にウエットな部分を残しているところが涙を誘いました。