がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

[小説]華氏451度

レイ・ブラッドベリ著。マイケル・ムーアさんが作った大統領を非難する映画にタイトルが似ていたりするかもしれませんが、実は全く違います。
この小説では、人類が科学を間違った方向へと進化させ、その結果人類は目も当てられない様となっています。高速道路でちょっとスピードを落として運転すれば逮捕され、徒歩で移動すれば逮捕され、シェイクスピアアインシュタインの作品は禁書として役所の人間によって焼き払われます。居間の壁には始終楽しい番組が放映され、常に人々は耳に超小型トランジスター・ラジオをはめこみ、垂れ流される楽しい物語を聞きながら日常を過ごします。
ふやけた日常の中、禁書を焼くのが仕事のモンターグは、ある夜帰宅途中、一人の少女と出会います。少女は草木の匂いを嗅ぐことを楽しみにし、車を乗り回して街灯への正面衝突ごっこをしたがらないという、同年代の子供たちからすれば非常に風変わりなものでした。そこから徐々に彼の日常が変質を遂げていきますが―――――
文章の表現技法など、物語としての面白さとしては割りと普通、さらりと読み流しても構わない程度かもしれません。
しかし、ブラッドベリが描いた未来予測はあんまり無視できるものではないかな、と思えます。
現代社会でも大抵の人々はテレビにかじりつき、車は早く、使い勝手がよくなるように改良されていき、子供達への教育は段々と嫌な雲行きを辿り始め、深く考えるということがなくなり始めてきています。そこらへんは、この華氏451度とかなり似通っているのではないでしょうか。
この作品が書かれたのが1953年、およそ五十年後をほとんど完璧に予測しているブラッドベリには先見の明があるのでしょう。
ただ、本が焼けていくということまでが本当のことになってほしくはありませんが。