がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

独白するユニバーサル横メルカトル(平山夢明)


すごい間が開きました。というか殆ど死人状態でした。ごめんなさい。ということで最近読んだ本の感想。
短編集ですので一話ずつ。

  • 『C10H14N2(ニコチン)と少年――乞食と老婆』

今回の異常タイトル賞。平山さんのタイトルセンスは異常だといつも思うのですが、これは輪をかけて更に意味不明。とは言え読み終えた後なら推測できなくもないですががが。
内容としては、不条理ホラーとしてはちょっと破壊力に欠ける印象。後詰めが足りない感じです。前半と後半のギャップが大きいのもちと問題。
それにしてもおじいさんの悲哀ぶりは異常。

  • 『Ωの晩餐』

Ωのネーミングにも意味があると良かったのですが、作品を読んだ限りではそんなに無いのが残念。
それにしても平山さんは、図体と脳味噌がつりあわないキャラクターを好きなのでしょうか。こういうのが町内に一人は欲しい。
グロテスクな面でも感傷的な面でもなかなかの作品でした。ごちそうさまでした。

  • 『無垢の祈り』

後日談をかなり知りたい作品。つか誰かSS書いてくれないだろうか。
それにしても破滅しかけた世界がよく描かれていてため息が出ます。素敵な世界とキャラクター。義父鬼畜すぎ。
難を言えば途中でオチが読めてしまうことぐらい。

  • 『オペラントの肖像』

どこかで何かを決定的に間違えた人類のお話。
芸術の分野に目をつけたのは面白く思えましたし、なかなか楽しく読めました。
しかし平山さんの作品はどこを向いてもグロ描写が出てくるなあ。

  • 『卵男』

ミステリ形式の作品ですが、うーむ練りこみが甘いというか、理解できても釈然としないものが。もう少し描きようがあるのでは、と思います。

  • 『すまじき熱帯』

タイトルの意味は、すさまじきを一文字抜かしただけかと推測してみますが、作品中で全く明かされていないので結局は闇の彼方です。
それにしても現地人の言葉遣いに笑った。意外と狂人が行ったら心地よく住めるのではないでしょうか。
あっさりとした終わり方ですが、同時に非常に明快な終わり方でもあるので個人的には高得点。どっちを向いても絶望ばかり。

  • 『独白するユニバーサル横メルカトル』

表題作。
おそらく好き嫌いが非常に別れる作品かと思います。まずは最初の一ページを読んでみましょう。それで合わないと思ったら読むのはやめたほうが良いです。逆に気に入ったらどんどん進めて下さい。私は気に入った方です。
まさかユニバーサル横メルカトルにこんな使い方があるのかと思うほど凄まじい作品でした。何よりも作品全体の雰囲気が他作品を圧倒しています。ぐいぐいとページに引き込まれます。語り部にこれほど惹かれたのは初めてでした。
オチはいささかぱっとしないものですが、それまでのページで満足できたので気にしません。

  • 『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』

内臓と骨と血管と脳味噌が全面的に押し出されている作品なのですが、なぜかおいしいアップルティーを飲んだ後のような読後感。むしろすっきりします。
こういう作品は読んで終わらせるよりも、むしろ読んだ後に色々と終わった後の事や始まる前の事を考える方が良いと思います。

  • まとめ

流石に『このミステリーがすごい! 2007年度版』で一位になっているあたり、力作が揃っています。
新品で買うのも良いかと思いますが、流通量もかなりのものだと思いますので古本屋で見かけることも多いかもしれません。その時にさっくりゲットするのもリーズナブルですね。
個人的お勧めは『独白するユニバーサル横メルカトル』と『無垢の祈り』、『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』です。これだけは読んでおきたい作品。
他の短編集としては『ミサイルマン』があるので、こっちにも手を付けてみようかと思います。しかし古本屋で売ってないんだよなあ、うーん。


web拍手のお返事。遅れてごめんなさい……
9:32 ブーンと飛ぶアリスが人形の干渉でチカチカと視界入れ替わる際、空中で振動して白目剥いたり泡や涎吹いて
9:36 そのまま弓なりになって魂交換、魔理沙ん家に来た時から人形の自演!となるのもなかなか面白(アリス眼姦

アリス弄ばれすぎですね。もうそこまできたら完全に人形に自我あげちゃえよ、って言いたくなります。
そういえば妖怪は精神がやたらと強いらしいですが、アリスの場合は人間から魔法使いになったらしい(ソース:東方求聞史紀)のでどうなんでしょうと思ったり。ちゃんと人間のように泣いたり怒ったり喚いたり発狂したりするんだろうか。
本人は魔法の森に篭っていますが、実は一秒おきに森から放射される魔力に精神を侵食されないよう頑張っているのかもしれませんね。