がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

熊の場所(舞城王太郎)

 さっくりと読み終えたので感想を。短編集ですので一本ずつ。

 表題作。私的ナンバーワンヒット。
 主人公である少年と猫殺しのまーくんとがどのように友情を育んでいったかを描いたものでありますが、一つの教訓、所謂『個人的神話』とか言いそうな類のものを中心として物語が描かれている様が面白くなっています。
 物語全体が些かも雰囲気を乱すことなくまんべんなく調整されており、中だるみすることもなくすらすらと読み込めました。非常に良い出来のものであり満足。
 しかしまあ、まーくん視点でも描いて欲しかったなあ。ある程度読者の想像力に任せる部分もあるので、欲を言えばそういったものも欲しい。

  • 『バット男』

 ゴッサムシティのヒーローとは全然関係なく薄汚い格好でバットを振り回す男の物語。
 むしろ展開としては彼が去った後が中心となるのですが、そこにバット男の影が執拗に纏わりついてきます。味がある作品でしたけれども、もう少しバット男についての考察や活動を深めて欲しく思います。
 人間関係のドロドロさには満足。舞城王太郎の作品は投げっぱなし事件や事故などが多くこの作品もそれが含まれているのですが、あまり不快感を催すものではなくむしろ不条理さが物語の後味の悪さをより引き出しています。
 それでもラストの主人公の独白はうーむどうなのだろう、と思ってしまったり。ちょいと蛇足気味では? ということで。

  • 『ピコーン!』

 これ、タイトル思いつかなかったから適当につけたんじゃないのか……と思うようなタイトル。というか擬音ですか。
 舞城王太郎作品ではずらずらと一人称で文章を流しまくるものが多いのですが、この作品ではそれが少々冗長気味に感じられます。もう少し句読点を増やしてもいいのでは、というより飽きます。
 馬鹿と阿呆の間に知性を織り交ぜたようなキャラクターは面白かったのですが、短編ということもあってサブキャラがあまりいないのは寂しい。なのであまり話が活きて来ない感じもします。
 

  • 『全体』

 400円(税別)のお値段ですが、話としては上質なものが多いので購入をお勧めします。しかし200ページで400円は安いのかしらそうでないのかしら。
 とりあえず舞城王太郎知らないって人はこれを読んで大体の感じを掴むと良さそうです。
 さて次は宇宙からの帰還(立花隆)でも読もう。