がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

多久弘一『中国怪談奇談集』里文出版、2002 その一

:たまには趣向を変えてアジアから攻めようと、中国産の怪談集です。長くても十ページに満たない掌編サイズの怪談が多いので、湿っぽい話が多いにも関わらず読者に与えてくれるのはサクサク感です。また単語にカーテンやブッ叩くなどの語彙がチョイスされているので、なんとはなしに現代的な色彩を添えてくれます。
 ここでは『聊斎志異』や『子不語』、また『捜神記』など、説話・民話集から拾い集めた話が散りばめられています。
 個人的なお気に入りは【点鬼簿】と【お爺さん、二人の孫を刺し殺す】、【屍の怪】となっております。以下で感想を紹介。


点鬼簿
:息子が早逝する運命を知った父親が、神に品物を捧げて延命してもらう話。あれ、これ賄賂じゃない?
 ここでは父親がひたすら生と死を司る神様たちに頼みごとをしていますが、一切の言語を抜き、言葉を交わさずお辞儀するだけで意思疎通をする、というのが互いの距離感を良く表しているように思えます。物理的な距離は近いのですが、心理的、あるいは種族としての距離感は億万以上ということでしょうか。神様たちの姿形が人間に似ていることから、より寒々しい超越感を醸し出しています。
 このお話では父親の願いが叶えられていますが、もし父親が言葉ひとつでもかけていたら、父親の身辺含めて一体どうなったのでしょうか?

 残り二つはまた後日に。

中国怪談奇談集 (Ribun books)

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