がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

多久弘一『中国怪談奇談集』里文出版、2002 その二


【お爺さん、二人の孫を刺し殺す】
タイトルだけですべてを語ってしまっていますが、化物に騙されたおじいさんが今度は奴らをぶっ殺してやろうとあれこれ策謀しているうちに、なんとお孫さんを殺してしまった話。というかそれくらい気づけなかったんでしょうか
 孫の殺害で物語自体が終わっていますが、その後のおじいさんの心境や、行動が気になるところです。スッパリと切り過ぎちゃって、余韻があまり残らないのが残念。
 こういう勘違いとか、理不尽さからやってくる災難など、好みです。


【屍の怪】
:宿に来たが、あまりにも混み合っているので、霊安室で屍と一緒に泊まることになった四人の旅人たち。夜中、寝付けない一人の近くで、死んだ筈の屍が起き上がる。
 まず霊安室じゃなくて主人の部屋でもいいから泊めてあげたらとか考えたくなりますが、そうした前提は棚にあげちゃいましょう。
 この短編では屍が周りの仲間たちを殺し、主人公をも殺そうと迫ります。人が寝静まった真夜中を、叫び裸足で駆けながら逃げまわる主人公、ひたすらに殺そうと追いすがる屍。なぜ死んだ肉体が動くようになったのか、最終的に生き残った旅人はどのようにして生きていくのか、そもそもどうして屍が旅人を殺そうとしたのか、そうした一切の現象に説明はなく、ただ危機と恐怖と不条理とで物語が染め上げられていくだけです。こういうの大好きです。
 ところで屍に殺された旅人らなんですが、もしかしたら屍が仲間を増やそうとした結果であって、事件が終息した後で死んだ彼らが活動をはじめる、とかいう後日談があったらもっと素敵な気がします。しかしそうしたら半分ゾンビ物ですね……

 今回で『中国怪談奇談集』は終了です。次は何を取り上げましょうか。

中国怪談奇談集 (Ribun books)

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