がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

仁木英之『僕僕先生』新潮文庫、2009


:僕僕先生かわいい! 王弁ダサーい! から始まる(別に始まりません)中国唐代を舞台にしたファンタジーノベル第一弾。ちなみに第五弾まで既に刊行されているので、一気読みにも最適。文庫本だと第三弾まで発売されています。


 この本の概要を文章で表すとするならば、仁木英之先生の筆による、笑いありこそばゆいラブあり、異世界突入あり、なんかシリアスな対決ありと、幅広くかつなんかだんだん狭くなってない? お? あれっ仙人様が無理やり狭めてらっしゃる!という、仙人とその弟子が織り成すお気楽道中記、となっています。楽しくも小洒落た仙人たちと、悶え苦しみながらも突き進む人間らが入り乱れ、時に争い時にじゃれ合う古風ドラマ。丹念に推敲された文章と、無駄を削ぎ落した単語群から形成される独特の空気感は一読してみてこそ。


 またこの点は小説の解説にも含まれていますが、見ていて感じるのが、主人公である王弁が師匠である美少女仙人(重要)僕僕先生と旅に出て、七転八倒し、修羅場のようなものを潜りぬけ、美少女(重要)仙人との恋愛や自身について悩んだり、果ては死または発狂という窮地に追い込まれていきますが、そうした山あり谷ありの文章の根底にあるのは『楽』ということです。時折混ざる楽しいシーンや、シリアスなシーン、また文章の中からまろびでる雲とも水飴ともつかない雰囲気は、読者を楽な世界へと誘ってくれることでしょう。


 ついで、作中での僕僕先生は黒髪を腰まで垂らした少女なのですが、読みながら頭に浮かぶのがどうこねくりまわしてもちっちゃなツインテールにしかならないのは、多分『鬼哭街』のせいです。おのれルイリー!

僕僕先生

僕僕先生