がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

舞城王太郎『NECK』講談社文庫、2010

 『ディスコ探偵水曜日』や『九十九十九』、『スクールアタック・シンドローム』などで常にこちらの度肝を抜いてくれる舞城王太郎ですが(チョイスには露骨な意図が含まれています)、今回は『首』を素材として、それを用いた短篇集を出してくれました。でもこの厚さだと中篇集って言ったほうが良いかもしれません。
 全部で四話あるので、一話ずつ順繰りにレビュー。今回は『a story』を。

【a story】
:人より首の骨が多い女の子に襲いかかる異常、怪漢、冒険、そして殺人事件。旧と現の事件が混じり合い、首に潜む秘密が迫る。
 登場する人物たちは馬鹿馬鹿しくも現実性、またはリアルさを兼ねていて楽しくありましたが、物語がちょっと歪すぎるように見えたので、中和されて落ち着いた感じになりました。しょぼーん。拍子抜けというよりも、物凄い花火が打ち上がると思ってワクワクしてたらひぽーんと簡単な火花が出ただけでした、という例えです。作中で用いられるトリック(現代版)、首の中に隠された秘密、怪漢たちの警告の意味がややズレたようなところもありますし、作者が主張したいだろうなあという部分が強すぎて、つなぎとしての他シーンも薄く見えました。きっと骨に比べて肉が厚すぎるせいでしょう。
 一番頷けたところは主人公が成長する際に味わう柔らかな幻滅、またお母さんとの言い争いのシーンや、リア充(?)になろうと飲み会に出ようとし、知人に思い切り笑われるシーンなど。な、なんか本気できつそうだぞ…………
 主人公の百花を助ける(というか実質彼女の代わりに謎を解いてくれる)ノジャジャはあまりに強すぎてこの人主人公じゃないの? と思うぐらい。謎を解き、邪魔な人らをどつき、警察にコネを持ち、障害をなんなく跳ね返す姿は見ていて無敵スター永続状態のマリオを彷彿とさせますが、嫌にもならずするする受け入れられるのは筆力の賜物でしょうか。ううむ。どっちにしろこういう人いるとスラスラ進んでくれますし。
 いろいろと書きましたが、始まりの雀躍な感じや怪漢たちの謎を追うシーンはやっぱり面白かったです。がくり。

 

NECK (講談社文庫)

NECK (講談社文庫)