舞城王太郎『NECK』講談社文庫、2010
再び続き。今回は『the second』です。次で終わる予定。
【the second】:山中にキャンプしに来た六人の男女に襲いかかる、不条理と悪意の出来事。
舞城王太郎さんの作品は、キャラクターらが基本的にスターシステムのようですので(奈津川関係や水星Cなどのメインキャラもしくは飛び出た個性の人間は除いて)、エンタメ性が強い作品ではキャラクターよりもストーリーと文章の突っ走り力、それからマジックとトリックを付け替えながら勝負しているように思えます。それを踏まえると今作は傑作というより佳作という感じでした。展開や文章などの、部品の付け替えにおいて一定以上の水準は超えていますが、突き抜けたというよりはむしろ落ち着いてしまった感じでした。文章と一緒に絵本式の絵が用意されているので、暗黒童話として読んでみるのも楽しいと思います。
使用された殆どのネタはしっくりきましたが、作中に出てきた『馬』は具体的に意味を突き詰めていくとどうなるのか、やや気になりました。主に作用の仕方や存在理由など。『馬』でもいいなら『亀』や『鶴』でもいいんじゃないんでしょうかうーん。トランプの表裏のようなものでしょうか。くるくる、くるくる。あとキャラクターに明確に識別できるほどの個性がないせいか、判別に苦労したり。
見所というわけではないですが、ラストに待ち構えていたのが真っ暗ハッピーエンドというか、落とし穴にハマったと思ったらそこには生き別れのおじいちゃんが! あっよく見たら死んでる! 的な気分に陥り、思わず清々しさと笑いがやってきました。ただし夜中に一人でこっそり読むのではなく、休日の朝にでも、コーヒーを飲みながら捲ってみたい作品。夜だと変なの出る。
あ、ページの色が展開によって暗くなったり淡くなったり、暗黒になったりする演出は好きです。でもこれ雑誌でやると製本苦労しそう。