がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

巌窟王、2004

第十五幕『幸せの終わり、真実の始まり』:彼岸の此方側、此岸の向こう側。
 宇宙船に乗り、伯爵と共に飛び立ったアルベール。そこで伯爵による譬え話――ある船乗りが、友人と船乗りの婚約者に裏切られた話を聞き、自身も知らず涙を流す。一方アルベールには内密に、マルセイユにいるヴァランティーヌの祖父、ノワティエ翁の元へ巌窟王のことを調べるために向かったフランツは、そこである事実を知る。エデはフェルナンの前に出て自身の奴隷としての過去を暴露し、彼が犯した事を明らかにする。言い知れぬ邪悪な予感に震えるアルベール。伯爵は彼を地球へと送り返すことを話し、自身は宇宙船に残る。アルベールが去った後、伯爵は哂い、哂い、そして哂った。
 エデ、フランツ、伯爵、それぞれの行動が実を結び始め、爆破の前兆が如実に現れ始めます。エデはフェルナンが自身の父を殺害した事実をぶちまけ、その行動そのものに苦しみます。ノワティエ翁の記憶から語られる巌窟王。アルベールは伯爵の話に感じ入り、自身の純真さを顕にします。個人的にこの話では、伯爵の遠い構想やエデの叫びとは別に、フランツの一本芯が通った態度に心を動かされます。ひたむきにアルベールを念頭において行動するフランツは、それ故に頼りになるのかもしれません。
 またエンディング五分前が非常にお気に入り。入りや雰囲気、演出が素晴らしく魅力的でした。音楽の伸び上がりが烈しいのかもしれません。
 

第十六幕『スキャンダル』:周りて、周りて、腐敗は廻る。
 詳らかにされたフェルナンのスキャンダルはパリを震撼させた。甚だしい醜聞の暴露によってフェルナンは時の人となり、その息子であるアルベールも同様であった。父のいる宇宙軍大本営、友人ポーシャンの勤める新聞社、そして母親――アルベールが訪れた全ての場所が父の血塗れの過去を肯定しており、潔白を求めるアルベールの想いを否定する。調査中のフランツはエドモン・ダンテスという名に行き辺り、彼がマクシミリアンの父親の務めていた船に乗っていたこと、そして同じ船にダングラールやフェルナンまでもがいたことが明らかになる。家族を崩壊させたことに対しての激烈な憤怒の余り、発端であるエデを追いかけるアルベール。宇宙港にいたエデの元へたどり着いた刹那、伯爵の乗ったロケットが宇宙より舞い降りてきた。
 ユージェニーがアンドレアとますますくっつけられそうになっていたり、フェルナンの過去が暴かれたり、母親メルセデスが息子アルベールと喧嘩したりして大激動ですが、何よりショックなのはメイドとして務めてらっしゃったペッポが実は伯爵によるスパイだったということでしょう。あの出番のなさは隠密の度合いを表していたのか……と、背筋が冷えると共に安心したくなりますが、いずれにせよペッポさんの悪女っぷりには頭が下がる思いでいっぱいです。あと後ろの方で二話ぐらいに出ていた盗賊の親玉とかいるんですが、ペッポさんがいればこいつらいなくてもいいんじゃないですかね?
 いよいよもって奈落の淵に立たされたアルベール、彼の(精神の)明日はどっちだ!

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