がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

巌窟王その九(復)

 今回DVD表紙の主役はフランツだ! でもいたずらな風が巻き起こす髪質の変化のせいで、どう見てもドプレーだぞ!


第十七幕『告白』:燃えて落ち、燻り、巻き上がり、生まれる物は。
 伯爵は帰還した。かつて自身に固い意志を見せてくれた伯爵に希望を託してアルベールは彼に臨む――そして伯爵が少年を騙していたこと、モンテ・クリストの策謀のために己が騙されていたことを知る。侮蔑にも似た笑いを浮かべて感謝する伯爵にアルベールは、鎧と剣によるブローニュの森での決闘を宣言した。フランツ。マルセイユから戻りアルベールと再会、喜びを、そして識った内容を分かち合う。ユージェニー。アルベールの誕生日を翌日に控え、彼女なりの贈物として曲を練習していたが、そこに現れたフランツは、彼女にアルベール宛のカードを託した。
 甲 冑 か っ こ 良 す ぎ 。甲冑というより機動装甲やらパワードスーツとも呼びたくなりますが、非常にスリムで、黒金の中における繊細さは内蔵を備えた鉄巨人のようでもあります。無骨でありながら人形を思わせる、矛盾を内包した鎧。信奉していた全てが地に落ちたアルベールですが、思ったよりも立ち直りが早いどころか、逆流して爆発してしまったようです。既に友人でなくなった伯爵にどのように立ち向かうのか? でも宴会シーンとか見ていると死亡フラグが巨塔のように立っているようで不安です。またユージェニーが演奏していた曲はオープニング曲『We were Lovers』のようですが、こういう演出はニクい。
 酒盛りの後、泥酔したアルベールを見つめるフランツの眼差しに何かしら狼狽えるものがありますが、以下次号!

第十八幕『決闘』:暁に其は響き、其は破壊し尽くし、其は慟哭する。
 アルベールの母親メルセデスは、伯爵の正体がエドモン・ダンテスであることを確信し、彼に会うためにブローニュの森へと急ぐ。そこに繰り広げられているのは二体の甲冑による壮烈な決闘であり、激突においては伯爵が優勢だった。指を落とし、足を斬り、羽を砕き、そして止め――甲冑から降りた伯爵は砂程の躊躇いもなく串刺しにし、中にいたフランツは瀕死の重傷を負った。アルベールの身代わりとしてやってきた彼は完膚なきまでに敗れ、全てが終わった頃にやってきた少年に抱きかかえられる。そして日が姿を現す頃、フランツはアルベールの誕生日を祝いながら、死んだ。
 やはり見所は甲冑による戦闘シーン。ぬるぬる動くどころか、ちょっと動きすぎて鼻が変になります。無生物でありながらもそれは古の爬虫類の如く滑らかに動きまわり、人のように振る舞うそれが悶える度に、背筋で何かが反り返る感覚を覚えます。叩き付けられる剣と剣。硝子のように鋭利な、鉄塊よりも禍々しい巨人たち。霧に烟る公園。爆発の如く破裂する火花。決闘の名の下に行われる殺し合いは、より精密に、より未来的となり、それはそれは残酷に人の形を忠実に綿密に表しているのでありました。
 今回で逝ったのはアルベールの親友フランツ。一点の曇なく、ブレなく、ひたすらに彼はアルベールの益を思って行動し、死んだようでありました。葬儀でアルベールと出会い、親友となった彼は、ただひたすらひたむきで魅力的でありました。過去形なのが残念。おそらく彼にとってこの人生は割かし誇れるものであったのではないかと思います(遺ったアルベールの叫びの行方について眼を瞑れば)。うーん、退場が残念です。

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