がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

巌窟王その十(復)

 気がつけば残り二回。頑張りたいところです。DVD表紙絵はアンドレアとユージェニー+後ろに変なオッサンですが、後ろのオッサンはいないほうがいいんじゃないかと老婆心ながら忠告したいところです。


第十九幕『たとえ、僕が僕でなくなったとしても』:引き絞られていく復讐は、弓のようにも、引金のようにも。
 フランツが死んだ後、伯爵が狙いを定めたのはダングラールの銀行だった。徹底的な株価操作による破滅を企む伯爵に為す術のないダングラール。いよいよ窮地に追い込まれた彼は、待ち構えていたかのように娘ユージェニーとの結婚を申し込む富豪貴族アンドレアの言葉に乗ってしまう。娘は反発するが、アンドレアはいよいよもってダングラールに取り入り、ユージェニーを離さない。その頃アルベールはフェルナンのスキャンダルによって地に落ちた威厳に苦しみ、親友を亡くした無常感と共に悪夢を彷徨っていた。
 ヴィルフォール、フェルナンなど、他の実力者らが消え失せた今、残されたものはダングラールと彼の銀行のみ。金こそが至上だとするダングラールの価値観をまるごと破壊しようとする伯爵のやり方は徹底であり、どこまでもブレません。ちなみにフランツを殺害相手として誤認したのは多分認識していると思われますが、どういうわけかアルベールなどは放置されたままでした。それまで長い間詰められてきた、ユージェニー編がいよいよクライマックス。暗雲はますます濃くなりそうな予感がします。


第二十幕『さよなら、ユージェニー』:とうとうペッポさんが! でた! けど! もう出なさそう!!
 迫るユージェニーとアンドレアの結婚式。アルベールは途方に暮れるが、そこにペッポが近づき、彼に伝える。哄笑するアンドレアと、絶望するユージェニー。そして婚姻の当日、着飾ったアンドレアと式場で署名にサインを渋るユージェニー、そして強圧する父親の前に現れたのは、潜り込んだアルベールとペッポだった。
 DVDと他媒体とではタイトル表記にズレがあるようなので、公式サイトの表示を参考にしました。
 元がフランスの古典文学なので、まさかの寝取り展開かと半ばヒヤヒヤしましたが、後半からペッポさんとアルベールのコンビが現れてくれたのでホッとしました。しかしアルベール、女装して現れたのは良いのですが、服装が厳しい! カツラとか!
 作中後半パート、ユージェニーが幼少時を振り返り、思い懐かしみながらパリを出て、未来に思いを馳せるシーンがありますが、これになかなか魅せられました。フランツのカードの中身も合わせて考えると、とても良い場面です。ただこの場合、アルベールがフランツを失わずにカード読んだとしたら、特に実感が湧かず、アルベールを目覚めさせる効果が薄かったように思われます。そう考えてみると、フランツの死はアルベールにとって、劇薬またはショック療法としての意味合いがあったように思えます。
 そしてペッポさん、完全にそっぽを向かれたアルベールをすっぱり諦めて新しい恋に生きるようですが、なんとも男らしくてさっぱりしました。やはりペッポさんは有名女優。えっ? 彼女はもともと男じゃないかって? いやいや……抜かれますよ?
 アンドレアについてですが、アンドレアは結婚式で経歴詐称がバレて捕まるのですが、彼の計画は伯爵の監修によって行われているのに、どこで足がついたのか謎です。事前に事情を知る人がタレコミでもしたのかもしれませんが、ううむ。アンドレアに落ち度があったのでしょうか。
 ラストにユージェニー。彼女はニューヨークに渡ることでパリからの逃亡に成功しますが、アルベールは宇宙に行っても尚逃れられなかったのに、ユージェニーは飛行機に乗るだけでいろいろな問題の蚊帳の外になれるので、いつの時代も国境は強いのだなあとしみじみしました。

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