がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

巌窟王その十一(復)

 DVD表紙絵はオッサン三人組なのですが、前回と違って大変ハンサムな方たちですので、貴人三人組と呼び直したいと思います。でも二人ぐらいもう出ませんけどね

 第二十一幕『貴公子の正体』:鉄槌は留まる所を識らず。
 宇宙へと逃走したダングラール、投獄され裁判にかけられたヴィルフォール、それぞれに銘々の手段によって、伯爵の鉄槌がくだされる。黄金の亡者には金の檻の中での餓死を、権力に取り憑かれた傲慢な者には妻の末路と同じ毒による精神の腐敗を。その過程で明らかになるアンドレアの過去――ヴィルフォールとダングラール夫人による不義の挙句に産まれ、父によって生きながら埋められた身上を。二人の男が断末魔と共に破滅する頃、伯爵とアルベールは再び出会い、モンテ・クリスト伯が狙う最後の一人、アルベールの父フェルナンが軍を掌握してパリへと帰還した。
 溢れるように明らかになる伯爵の過去、そして男たちの過去。次々に落ちてくるピースは記憶や意志を呼び起こし、過去に歩いてきた線を浮かび上がらせます。
 今回の見所はまたも無茶して伯爵に正面から挑むアルベールと、開き直ったアンドレアによる貴族へのメンチ切り。さすが別世界では最古の英雄と評されるだけあって、素晴らしい威嚇です。完全に垣根を取り払ったアンドレアは躊躇なく父親を毒針で刺し、母親と寝たことを盛大に告白しました。ご開帳もここまで来ると清々しいですね。
 ラストで対峙するアルベール(解脱)と伯爵。次回へ続く!


 第二十二幕『逆襲』:パリは燃える。人は燃える。彼らもまた燃える。
 クーデターを起こしたフェルナンはパリを砲撃、火の海と化したパリで人々は逃げ惑う。絶叫と悲鳴の最中、少年は伯爵から身の上を聞き出し、父フェルナンと止めるために彼が乗っている船へと向かう。同じくフェルナンの元へ向かっていた妻メルセデスは、夫の過去全てを彼から聞き出し、半ば錯乱状態と成ったフェルナンに撃たれてしまう。共に銃で傷ついたアルベールを見たフェルナンは完全な恐慌に陥る。そして自分が地獄に追いやったエドモン・ダンテスがモンテ・クリストと名を変えて生きていることを、彼が悪夢の引金であることを知り、完全に殺害すべくクリスト伯が居住するシャンゼリゼ地下湖へと降りていく――自身の、巨人の如き甲冑を身に纏って。
 良い感じのクライマックス。転んでもただでは起きない男フェルナンは、地位を追われながらも地位を追い詰めるようになりました。この世界では帝国とパリが戦争状態にあるので、もしかしたら帝国側もフェルナンに手を貸しているかもしれません。
 気に入った台詞の一つに『真実とは、信念を胸に己が手で作り出すもの』というフェルナンの至言がありますが、もしかすれば故ダングラールや故(精神的に)ヴィルフォールも、同じような考えを胸に秘めていたのではないでしょうか。人をどこかへ追いやり、良心という名の些細な塀を破壊しつくした彼らが捉えた真実か、あるいは逃げこむことのできた避難場所としてか。
 そういえば飲み込めない所がひとつ。終盤、ベルッチオたちの乗った飛行体が撃たれたアルベールを救出する辺りです。飛行体が、アルベールが乗っているブロックに激突したと思ったら、いつのまにか少年が救出されており、繋がりがよく分からないのです。ブロックそのものをかっさらったと考えても、同ブロックにフェルナンが乗っており、彼が退避した様子もないので、そうすると巻き込まれたことになってしまいます。つまりぶつかりつつもアルベールらだけを救出したということですが、考えつくところとしては、かつてアリーがヴィルフォールに撃たれた伯爵の身体を治療した際の、弾丸摘出技術を応用したのではないか、と思います。飛行体が飛行船にぶつかった瞬間に、アルベールらのような生体・ある種の物質をあるレベルで分解し、飛行体の中に引っ張りこんでから、別次元で再構成したということでしょうか。言わば異次元クレーンゲームですね。何らかの装置を使用したとして、距離の関係で直接ぶつかるぐらいでないと引っ張り込めないとか。ただアリーはその場にいなかったように思いますし、特殊な技術を用いたようにも見えなかったので、やはりスッキリしません。むむむ。

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