がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

room-butterfly『ZINJA SLAYER』2013(5/5)

 ドーモ、皆さん。復路鵜です。本日を以って最終回となる『ZINJA SLAYER』の感想です。この文章を通して東方ニンジャワールドの良さをお伝えできてたら嬉しいが、NRSのせいでやや文章が狂いすぎてる感アリ。ウカツ!

 以下注意書きです。

 ◆以下に記されるのは作品の感想ですが、他の人が読む面白さを消去しないためネタバレはしない◆NRS重点のためよく分からない部分があってもそっとしよう◆してください◆でもキャラぐらいには触れる◆あとアトモスフィアも◆

 ◆よりよいNRSを供給したい◆しますね◆あとネタがわからない人はゴメンナサイ◆先触れ謝罪◆次回からは通常の感想モードに移行します◆

 ◆スタートザマシーンスタートザマシーン◆

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『シンレイビョー・ヘル・オン・アース』(文/FALSE)
 おなじみキョート・ヘル・オン・アースを加工した作品です。ヨウカイスレイヤー……サナエ……サンダーガイスト……タイシ……本家でも多数がイクサに参入する作品ですが、ここでは幻想郷内の人物たちにうまく役割を割り振った印象を持ちます。
 そして東方アトモスフィアを保ちながら、元来の面白さ――終わらないシチュエーション内で、心理描写と交互に挿入される濃厚な戦闘描写、即ちイクサ持続性――をも小気味良く取り込んでおり、だからこそ違和感薄く物語に入り込めます。
 本家と二次を比較することはあまり良い判断ではないでしょうが、比べてみると、この作品はある意味で、本家のコンパクト版と見ても良いかもしれません。長すぎる前提はあらすじにまとめ(ここでも小ネタが満載です)、序破急の破急を綺麗に貫通しました。
 原作では、長かった第二部のフィナーレを飾る大戦闘と、数多の心情が結実するまさしくマッポーカリプスめいた極大的爽快感がありましたが、この二次創作でも、フィニッシュ特有の高速落下めいたスピード感が維持されており、非常に良いです。
 次いで気になるのは、ちょっと割愛された、此度の引っ掻き回し役――デスドレインやネブガドネザルの役割は誰が担ったのかということです。想像の余地があると読後感が膨らみます。あるいは古明地こいし、あるいは河城にとり、あるいは狂化フラン。
 新たなる始まりを湛えた終わりもさることながら、キャラクター達の後日も気になる所です。


『レッド・バイ・ハード・アンド・ハート・ダンサーズ』(文/ネコロビヤオキ)
 意外と出てこない妖怪の山を舞台にした作品です。造りが面白いのです。二つのエピソードを足して割ったような構造や、ニンジャから幻想郷寄りにイクサルールをシフトさせたアトモスフィアもとても良いです。
 ある意味で、これほどイクサと東方的イクサ――弾幕ごっこ格闘版を連結させた作品はないように思われます。満身創痍になれば肉体でなく服が爆発四散し、高度なコトダマを用いた戦闘前口上……人死にの代わりに、誇りや少女決闘という概念を今作は押し出しています。
 その結果としては、ニンジャでないことへの意外さよりも、むしろ幻想郷らしいイクサ形式に変化したことへの何気ない安心感です。要するに戦闘の結果が《死》や《全身不具》などのサツバツとした結果でないので、スペルカードルールの延長線として見ることができます。
 そうした東方世界延長線としての作品は、カギヤマ・ヒナとジンジャスレイヤーのキャラ性としても表れます。特筆すべきはヒナでしょう。
 これまでのエピソードにおいて、敵ニンジャは基本的にエビルで邪悪な存在でした。ですがヒナの根底にはギリニンジョが流れています。ジンジャスレイヤーも然り。全力での激突とギリニンジョの両立は難しいものがありますが、ここではうまく仕上げられています。
 ギリニンジョと同時に両者が行う決断的なイクサも魅力があり、読者は二者の魅惑的な決闘を眼前で見物できます。互いの精妙な心理描写とイクサが交互に描写され、速度と重みを作品内に置ききっており高得点。
 曖昧でワビサビなギリニンジョに特化したエピソードでありつつも、巧みでワザマエな重厚なバトルも開陳した、まさにアブハチトラズな作品です。スピーディーで正統派な短編はオススメです。


『ゲンソウ名鑑』(文/白)
 本家のニンジャ名鑑めいてサツバツとした世界に新たなニンジャ成分を補給してくれるありがたいリストです。リストという名目なので文章も簡潔ですが、しかしニンジャが表れるのだから一筋縄ではいかない。
 彼女たちの特徴に燦然と輝くアトモスフィアは一行読むたびに腹筋四散や内臓捻転などの暴風雨をまき散らしながら読者を追撃します。そんなタノシイの文章がシリアスな脇においてあるので、気づくのに時間がかかる場合もあります。
 これだけ見ればタノシイとオモシロイの文章ですが、果たしてそれだけでしょうか? おかしいと思いませんか? それだけで終わると思いましたか?
 このリストはオテダマの一つ一つめいて独立しています。しかし想像力という糸を通すことによって別な物語を、別な姿の少女達を映し出すことも可能なのです。あのキャラとこのキャラをくっつけよう。そうだ別のキャラも作ってしまおう。このキャラはイラナイコ……
 ここに提示されたのは尋常なリストに非ず、言うなれば可能性の万華鏡です。読んでいるうちに読者のニンジャ感覚を刺激する文体にはおそろしい策略が含まれているので、用心しいしい読み進めなければなりません。ニンジャの闇は深い。
 ちなみに私のおすすめは#19と#34に#81と#76で個人的に大人気です。圧倒的なファニーさと同時に前後◆猥雑はなかった◆を感じさせるつくりであって良さがある。タノシイやサスペンス、果てはフィロソフィアを匂わします。
 小人や小鬼などの新キャラアップデートも大いに期待したい所ですが、個人的に針妙丸の行方が気になります。


 以上で幻想郷と半神的存在を合流させた不可思議なアトモスフィアを備えた作品群らのレビューが終了したわけですが、ニンジャ、そして東方Projectが存在する限り、いつか第二、第三の名前を備えた怪物たちが表れるかもしれません。
 備えよう。