がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

今朝のあさぺーぱー(SSのみです)







したごしらえ









 たんたんたんたん。

 台所に、小気味よい包丁の音が響く。

「明日も、あいつはやってくるでしょうか?」

 だったら、彼に取られる分も考えて少し多めに下ごしらえしておかないと。

 がさがさ。とんとんとんとん。

 あいつは、どんなおかずを喜んでくれるでしょうか?

 彼のことを考えてみる。



 そういえば、今あいつは何をやっているのだろう……。



 何気なく見た時計は、0時35分。意味深な時間帯だ。

「おかず……」

 ぶんぶん。

 茜は浮かんでしまった想像を慌てて打ち消そうとした。

 彼とはまだそんなに話してないし、周りには、素敵な女性が沢山いるし……その、私なんかが。

 あ、でも、他の人を想像して、していると思うとそれはそれで嫌です……。

「――って、やぁっ!?」

 もっと恥ずかしい想像に、茜は再び頭を振った。

 包丁を持ちながらのその行為は結構危ない。

「……はあっ、はあっ……ふぅーっ」

 ようやく落ち着いた。

 彼女は料理を再開する。

 じゅー。

 フライパンにバターを落とし、白く泡だったところを塗りつける。

 こんなことでさえ彼女の心を動揺させるには十分であったが、彼女は鋼鉄の女。ここは気を強くもつ。

 そう、乙女はいついかなる時も油断してはならないのだ。



 ………。

 ……。

 …。

 下ごしらえが終わった。

 でも、今夜は少し多く作り過ぎてしまったようだ。

 小食な彼女では、少し残してしまうかもしれない。

「あ」

 良い考えが思いついた。

「彼にお持ち帰りして貰えば……」

 と、迂闊にも自分で言った言葉にまた顔を真っ赤にしてしまう。

 もじもじ。

 ふとももを擦り合わせる。

「もう遅いし、早くベットに行かないと」

 下ごしらえは、もう十分なのだから。