がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

今朝のあさぺーぱー




同窓会




「さあ、みんな昼休みよ。元気に遊んでくるのよー」
「はーい」
 素直に答えると一斉に庭へと駆け出すあたしの教え子達。嬉しいような、ちょっと物足りないような気分を噛みしめながら、あたしは朋也の方を振り返った。
「いい先生しているんだな」
「あんたもいい親しているみたいじゃない。あんたの子、いっつもあんたのこと話してるわよ」
 何故だろう。普段なら恥ずかしくて言えないような台詞も、今日は出てしまう。
「そうか。それは良かった……」
「で、何なの急に。あんたがここに顔出すのって実は初めてじゃない」
「いや、特に理由は無いんだ。」
 高校生のころに比べてずっと逞しくなったあいつは、でも、あの頃と変わらないちょっとふてくされたような笑みを浮かべる。
「ただ、急にお前の顔が見たくなってさ」
「――なっ!?」
 自分の顔がみるみる紅くなっていくのがわかる。
「な、な、そんなことあんたの奥さんが聞いたら許さないわよっ」
「いやアイツはそういうこと気にしないから、大丈夫だ」
 やっぱり、こいつは変わってない。
 こうやってあたしをすぐ動揺させるようなことを言うくせに、てんでにぶちんなんだからっ。
「って。殴るなよ」
「あんたが惚気るからでしょ」
 平手で叩いた手がじんじんする。こんな歳にもなって男の人を叩いてしまった気恥ずかしさと、彼があの人を語るときの優しそうな目を見て感じた奇妙な寂しさが、何故か放課後の教室を思い起こさせた。
「あたしも結婚しようかな……」
「お前はまずその暴力を直してからな。ってぇ」
 今度はグーで殴った。
「で、本当の用件はなんなわけ? あの子達の様子を見なくちゃならないから、早くして頂戴」
「ああ、それなんだけどな、今度春原がこっち来るんだ」
「へぇ、あいつが……」
 高校時代、あたしとこいつの傍にいた少年の顔を思い出す。
 あいつのことは、嫌いじゃなかった。
「で、どうせならみんなでぱっと騒ごうってな」
「みんなって、あたしとあんたとあいつで?」
「いや……みんなだよ」
 朋也の目が、高校時代には見せなかった輝きを帯び始める。
「おまえの妹も、風子も、智代も、幸村も、渚も俺の娘も一緒にさ」
「わかった。じゃあ椋にはあたしが連絡しとくわね。勝平――ってあの子の旦那だけど、彼も呼んでいいでしょ?」
「ああ。相変わらず返事が早くて助かる」
「あんたがいるからね」
 朋也ははあ? という顔をした。相変わらずのにぶちんだわ。
「じゃあ、それだけだ」
 そういって背を向ける。
 用件だけ済むとさっさと何処かへ行ってしまうのも。相変わらずだった。
「ん、また来なさいよ」
「気が向いたらな」
 彼の成長した背中を眺めながら、あたしはみんなとの出会いのことを考えていた。