がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

ボクのおいなりさん……(投稿者:復路鵜)

先日、新潟を物凄い強風が襲いました。その強さと言ったらもう擬音ではあらわせないくらい、無理を承知であらわしてみるとぎゅううおぉぉぉおおおおぉとかそれくらいの勢いです。
そんな中、私はジャック・ケッチャムの本を買いに行こうと思いました。どうして考えがそこに辿り着いたのかはもう定かではありません。とにかく私は本屋に行くことを決意しました。今思えばなんて無謀な…。
時刻はお昼を食べ、風があまり吹いていない十二時半頃。自転車で行けば大体三十分くらいの道のり、準備をちゃっちゃとこなしてさあ出発です。
外に出た途端、目の前を大量の落ち葉が音を立てて行き過ぎました。それとともに強風が私の顔面をかすめます。冷や汗が出てきましたが、ここまできて引っ込んでは準備をした甲斐がありません。決意が鈍る前に自転車に乗り込み、さあ出発。
五分くらい走った頃、とてつもない強風が吹いてきました。
いくら漕いでも自転車が動きません。前に進みません。それなりに長い間生きてきましたが、ここまで強い風に出会ったことはありません。
足がひきつってくるほど力を込めて漕いで、ようやく前へ前へと進みます。
やっと通り道の農道に出ました。いつもは十分ぐらいで辿り着けるのですが、今日はもう二十分くらいかけた気がします。
ちなみに、私がよく通り道に使うこの農道は、周りに遮蔽物となりそうなものや建物が一切ありません。そのおかげでいつもは風がそこかしこから吹いてきて、とても気持ちのいいものです。
今このときは逆効果でしたが。
前から風が来たと思えば一瞬後には横殴りに吹き付けてきたり、後ろから追い風となってくれば、今度は思ってもみない方向からやってきます。もう奇襲を受けているような感じ。
ここまで来て引き返すこともできず、ただよろよろと前に進んでいくしかありません。今は冬だというのに、すごく汗かいてます。
煉獄のような時間が過ぎて、近くにあったトンネルの中に自転車を乗り入れます。ぜーはー息をついて自転車から降りて、一休み。サイクリングではなく買い物にきたのですが、そこらへんがもう頭の中でごっちゃになってきます。
そしてますます強くなる風。
よし自転車乗り捨てよう、と即座に決心しました。幸いここらへんは車もあまり通りませんし、邪魔になることはないでしょう。
かくして徒歩で出発することとなりました。
まさに修行の如く厳しさを増し吹き荒れていく風、悲鳴のような音を遺しそれはすぐ傍をかすめていき、隙あらば顔面に吹き付けて呼吸が出来なくなるほど。
無茶なことしたなあと頭の隅で考えつつ、大自然の猛威と戦いながらゆっくりと歩いていきます。切実に車が欲しくなりました。
それから十五分ほどして、やばいくらい疲れてきました。もう死とか遭難とかいう事態を真面目に考えるくらいに。
このままでは何がしか恐ろしいことが起きると決断し、私は近くにあった精米ボックスの中に避難。いつもはなんでもないその小さい建物ですが、今の状況では雪山で遭難した際に見つけた山小屋のようなものです。中はお米くさかったけど全く気になりませんでした。
二十分間休憩し、落ち着いてきたところで再び出発。ありがとう精米ボックス、さようなら精米ボックス。
気力と体力を限界近くまで使い果たし、ぎりぎりまで歩き詰め、果たして私は本屋へと到着。
ふらふらの足取りでジャック・ケッチャムの本を捜索。
結果、ありませんでした。
物凄く愕然としましたが、流石に本屋で落ち込んでも居られません。
まあ仕方ないのでキングの『ベッカ・ポールソンのお告げ』とかラクドさんのHPでも紹介している『我が家のお稲荷様』とかを購入。
帰り道は行きほど風が強くはありませんでしたが、代わりにぽつぽつと雨が降ってきました。大急ぎで自転車のところへと戻り、出来る限り手早く家へと戻りました。
そんなある日曜日の出来事でした。