がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

Stories1の感想


クイズ・ミシオネア! 文月 そらさん
 解答を見ずとも全問正解したぜっ!!!!
 ……はさておき、懐かしのこんぺでは一つのジャンルにまでなっていたKanonの世界観への解釈編ですね。
 個人的には、あれはもっと遙かに大きな物語の一部でKanonの物語だけ小さくまとめるということ自体が不可能じゃないか、という気がするので、このジャンルの作品には宿命的に物足りなさを感じるのですが、そこは割り引いて読むことにします。
 それはさておき、構成が光っていた作品でした。文月さんのSSは読む度に構成を賞賛している気がしますが、今回も情報の出し方がとても上手い。結構破滅的な展開を予想したんですが、安易にそうせず、基本に還る(1人だけ選ぶ)というのもソフトな帰着点で、技巧を感じました。
 ……というか、これはひょっとして京アニKanonへの皮肉だったりするんでしょうか?


家族 〜弱虫お姉ちゃんの歌〜 久慈 光樹さん
 暴力的で下品な名雪……。
 ま、まあ気にしないことにします(汗)。ひょっとしたら「女なんて安心させておくとすぐつけあがる」という哲学が込められているのかもしれませんしねっ!?
 とはいえ、そうした変化に対する説明が不足しているかな、とは思いました。(おそらく名雪シナリオを経ていない)名雪が秋子から親離れしていることについてもそうなんですが、やはり原作との乖離は多少の説明が欲しいところです。
 名雪が成長したから、と納得しようとすると、今度はけろぴーを未だに抱いて寝ているような表現とか、真琴への異様な依存が子供っぽく鼻についてしまいます。ここで読者としては原作の名雪とこのSSの名雪との一貫した整合性を見つけられず、放り出された気分になってしまうのですね。


ひとりぼっちの雪うさぎ Manukeさん
 素晴らしいSS書き揃いのKanonSS界の中でも、個人的に10指に入る神SS書きの一人がManukeさんです。
 なんていいますか、もう、読ませてくれるんですね。何気ない日常を描いているだけでも楽しませてくれる、Kanonのキャラが生き生きと動いてる、そんなSSを描く名人です。
 今作も非常に美しい表現で読ませてくれた良作でした。こんぺなら8点。
 ん?
 点数低すぎやしませんか? (いや高得点ではあるんですが)
 このSSにはストーリーがないんですよ。どんな短いSSにも必ずストーリーを込めるManukeさんのSSとは思えない。
 なんかおかしい。そう思って再読したところで、やっと気が付くことができました。
 このSS、描かれなかった部分にストーリーがあるんですね。
 選ばれなかった舞が、魔物と戦い続けて遂に自己の否定を完遂してしまう悲劇。もしかしたら、肉まんや学校、雪うさぎといった要素もこの場にいない3人を暗示しているのかもしれません。
 しかし、それだけに留まらずこのSSには救いがあります。
 もちろんこのSSの舞が最終的に救われたこともそうなんですが、この舞には佐祐理がいません。舞の死は明記したのに、そこに前後して描かれるべき佐祐理の大怪我について栞が言及しないのは、おそらくわざとだと思います。このSSの舞が佐祐理と出会っていないことを示唆するための。
 翻って、原作の舞には佐祐理がいるから大丈夫だ、ということを示唆する仕掛けなのだろうと思います。
 ああ、それにしても月に住む独りぼっちの雪うさぎ、原作からぽんと飛び出てきたような二人が織りなす自然体の会話、そうでありながら原作の祐一と舞との交流を忠実になぞっている。そして絶望、救い、全てをこの短く美しいSSにさりげなく凝縮したところに、改めてManukeさんの凄さを思い知りました。


惑いて帰れ、楽園へ 八岐さん
 ネタ被らなくて良かったぁ!
 八岐さんといえば先のManukeさんと並び私の中でSS神の一柱。批評するのも畏れ多い方でございます(温泉卓球の続き、いつまでも待ってます!)。
 そんな八岐さんとうっかり若干ネタが被ってしまったのはCLANNADの合同誌Tiny Palmsでのこと。はっきり言って血の気が引きました。実力の差に絶望しました。けちょんけちょんにやられて参りました。
 今回はそんなことなくてよかったぁ!
 お前のことなんざ知らんさっさと感想を書け? すみません。
 でも実際、書くことないわけですよ。神がまた神SS書きました。他に何を補足すればいいんでしょう!?
 北川も栞も香里も、10年経って、一人一人の道を見つけて、大人の装いを身に着けても彼らのままで、香里は戸惑いながらも楽園へ還って行く。
 いつまでも続く楽園、どこまでも変わらないあいつ等、これ以上何を望みましょうや! (あ、名雪出して欲しかったかも)
 このSSを読ませて頂いた八岐さんに深い感謝を。


モラトリアム kobaxさん
 やりますよねー、これ(笑)。
 Kanonの印象的なフレーズや曲名を文中にさりげなく織り込む遊び、私も大好きで今回もやってます。
 最近はこれをやると初心者っぽいイメージがつきまとうせいか、する人が少なくなりました。久々に見られて感動しております(笑)。
 さて、祐一がどこに行っていたのかについては結構気になったんですが、結局よく分かりませんでした。おそらくあゆのいる場所ではあるんでしょうけど、想像するにはちょーっと情報が足りないかな−。
 名雪の壊れっぷりが酷くて見てられませんでした(笑)。じっさい、名雪シナリオの後の彼女が祐一を取り上げられたら、こうなってしまうかもしれないですね。逆に肝っ玉の強い彼女になりそうな気もしますが(笑)。
 周りの人は優しいですね。あゆがおそらく生存している世界観である以上、栞も生存しているからなんでしょうが、香里は名雪とは対照的に強くなりました。


315360000秒 seiruさん
 3度ほど読み直したのですが、意味があるような意味がないようなふわふわしたやりとりから、何か具体的な意味を引き出すことができませんでした。
 や、10年の重み、積み重ねという辺りの意図は読めるんですが、空想や可能性についても言及しているので、時の流れ以上の意図が隠されているように思えたんですね。
 ただ、その答えを見つけることが遂に出来ませんでした。
 間を置いて、また読んでみることにします。
「案外、家で北川さんに出会うかもしれませんねー」
 マスオさんてのは結構彼に似合ってる気がします(笑)。流石に祐一が知らない間に結婚してることはないでしょうが。