がらくたマガジン

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趣向を変えてSSでも(投稿者:復路鵜)

 ごきげんよう皆様、そろそろ春日さんにコンテンツを増やしたらどうでしょうと言いたいのですが『ならあんた作れ! 私はひぐらししてるから!』とか言われそうで言い出しにくい復路鵜です。
 さて今回は趣向を変えてみて、ssみたいなものを書き連ねてみました。
 お題的には『病的なほど内気な男の子の心情』です。
 ではどうぞ。
 
 中途半端という単語が一番似合っていた。
 何にしてもそれなりにこなせて、それ以上はけっして踏み込めなかった。出来なかった。
 サッカーがうまくてもサッカー部には叶わないし、勉強をがんばっても本当に頭のいい人には勝てるはずも無かった。
 人間関係もそれとほとんど同じようなものだったらしい。
 僕はさまざまな事柄を知っていた。けどそれほど深くではなく浅めの、ちょっと知っている程度のものでしかない。
 だから、すぐに会話も弾まなくなる。
 話題もすぐに尽きてしまう。
 たぶんこれには僕の耳が悪いものだということも理由としてあてはまるだろう。病院に行くほどではないけれど、時たま目の前の人が何を言っているのかよく聞き取れないときがあるのだ。
 そんなときは適当に相槌を打った。
 当然そこからは話も続かない。
 でも皆の輪からあぶれてしまうようなことはなかった。最低限のことは知っていたから、テレビドラマやアイドルのことについて何かしらをいい、適当に卑猥なことを言って置けば良い。
 もしくはただ作り笑いをしながら近くで立っているなり座っているなりしていればいい。
 今思うと、ただ皆から仲間はずれにされたくなかっただけかもしれない。だからこそ僕は分かろうと、理解しようとしていたのだ。突き詰めてはできなかったけれども。
 皆と一緒に居ても、僕は孤独だった。
 周りがどんな話題を話しているのか、分からなかった。
 僕が知っているのは初歩的なものだから、ちょっと突っ込んだ話題はもう知らないも同然だ。
 だから、皆と一緒に居て、話している話題について理解しているフリをするしかない。
 笑いながら、ああそうだねと相槌を打つしかないのだ。
 何か言えば場が冷めてしまうのではないかと恐れていた。
 仲間はずれにされるのが一番嫌だった。怖かった。
 それでもそんなことはなく、皆は優しかった。
 何にも言わない僕を仲間内に置いてくれた。
 すばらしき同情の産物というやつだろうか。
 僕はそんな扱いを受けていることが堪えられなかった。
 一人でぽつんと寂しくしているのは嫌だが、そんな扱いを受けることはもっと嫌だった。
 それでもどうしようもなかった。
 僕がいなくてもグループは成り立つのだ。
 いなくても別にかまわない、とあげられる筆頭人物なのだ、僕は。
 僕は皆と一緒にいる。けど、本当はどこか別の場所で一人きりになっているのだ。
 どこで一人きりとなっているのだろう。
 砂漠だろうか。
 海中だろうか。
 荒原だろうか。
 きっとどこでもない。
 僕が取り残された所は、誰にも理解できないのだ。
 皆に合わせようとしても出来なかった。
 どうしてもそんなことをしようとすれば労力を使う羽目になる。
 それは驚くほど怠惰なことだ。
 そしてその怠惰は、非常に大きな割合を占めている。
 そんなことをするくらいなら他のグループに行ったほうがマシなのではないかと思えるほどだ。
 でもそんなことは出来なかった。
 今更出来よう筈も無い。
 僕は上辺だけの付き合い、本当はどうでもいいと思われているような奴なのだろう。
 いなくなったらいなくなったで納得されてしまうような男なのだろう。
 僕は軽んじられている。
 皆から。
 僕からも。
 ひょっとしたら皆は僕に手を差し伸べているのかもしれない。
 君の生き方はここにあるよ、この輪の中にあるよ、と。
 僕はその手を取らない。取れない。
 彼らがいる世界は僕の知らない世界だから。
 居るだけで窒息してしまうかもしれない、そんな世界だから。
 僕は自分の世界の中で怯え続けるしかないのだ。
 もっと広い世界への小さなゲートがいつ閉じてしまうか、自分自身の世界の隅っこで怯えながらじっと凝視しているのだ。
 いつかは僕の居る世界も閉じてしまうだろう。
 そのときはもっと広い世界へと続くゲートを潜り抜けなければならない。
 僕にそんな芸当が出来るだろうか。
 出来ないような気がする。
 いや、もう半ば確信しているのだ。
 そんなことは出来るわけがない、と。
 僕はこの世界と心中するのだろうか。
 そんな気がする。
 皆がすぐ近くで笑っているというのに、僕は隣の部屋で手首をカッターで切っている気さえする。
 もしもそんな手段で楽になるのなら、僕はとっくにやっているのかも。
 でもまだやっていない。
 僕が死んだ後で、皆は僕のことを思い出しもしないかもしれないからだ。
 僕のことが耳に入っても、ああ、あれね、という程度で終わってしまうかもしれないからだ。
 そんなのは嫌だ。
 絶対に嫌だ。
 誰かに必要とされたい。
 誰かに存在を認知されたい。
 僕が居なくなったら苦しむ誰かが欲しい。
 でも誰が居る。
 ずっと僕は中途半端なままだったじゃないか。
 近くには誰も居ない。
 僕の上か下にしか、人は居ない。
 僕と同じような奴は、どこにもいない。
 仲間はどこにもいない。
 助けてくれ。
 いつまでもこのままでは、いずれ僕は気が狂ってしまう。
 僕に声をかけてくれる誰かを求めて叫び続けるだろう。
 ずっとずっと叫び続けて、喉から血を流すほどに叫ぶだろう。
 そんなことになっても僕はほっておかれるのかもしれない。
 無視されるのかもしれない。
 ああ神様。
 正気を失ってさえも、僕に安堵は見当たらないのか。
 どうか神様。
 どうか助けてください。
 どうか。