がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

粘膜人間(飴村行)

あらすじ:兄弟の利一と祐二は、身長195cm体重105kgという義弟の暴力に怯えていた。やがて家庭内での暴力はエスカレートし、このままでは殺されてしまうと判断した二人は村外れにある沼へと向かい、そこに棲む生き物たちに殺害を依頼する。しかしその事件がきっかけとなり、兄弟を巡るあらゆる凄惨の歯車が音を立てて回り始めた………………

 読んだ感想は一口で言うと寸足らずであるように見受けられます。色んなものの書き込みが足りないというか、八割がた完成したラフスケッチを見せられたような印象を抱きました。もうちょっと描写をねちっこく深く書いてくれれば尚良かったと思います。
 物語自体もところどころ余計というかどうでもよさそうな枝が多く(特に第弐章の髑髏のシーンなど)、ちょっと書く方面を間違えてるんじゃねえのかなあ、と思わざるを得ませんでした。回りくどい書き口で怖がらせる「ホラー」や「テラー」的なものではなく、直接内臓やら解体シーンを描く「グロテスク」な描写は度々登場していますが、これはグロによって引き立たせるよりもむしろグロテスクさで押し切ろうとしすぎている感じです。しかもあまり効果が出ていないと。また風景描写も似たようなのが何度か使いまわしされてるんですが、むちゃくちゃ違和感がありました。
 背景設定が戦前の日本っぽさや村外れの異形たちなど、非常に独特で優れていると思える分だけ勿体無いものです。
 ラストの対決シーンは思い切りの良さが光るか投げっぱなしとしてブーイングを食らうか評価が分かれるかと考えますが、私は前者として評価します。というかしたいです。もしかしたら続きが出るのかもしれません。
 ネタ自体は面白いと思ったので、作者のこれからの伸びに期待したいです。


粘膜人間 (角川ホラー文庫)

粘膜人間 (角川ホラー文庫)