がらくたマガジン

小説を書いたり、読んだり、勉強したりするブログです。執筆者紹介  (復)=復路鵜執筆  (K)=春日 姫宮執筆

太朗想史郎 『TOGIO』2010,宝島社

 一口で感想を表すとすれば、「コーラをガブ飲みした時に喉がキ――――――――ンとなるけれど、それがまるまる続く感じの小説」でした。


 特にそのキーン感覚が強いのが第一章です。一行目から始まる、グリンと目を惹きつける文章、常に生存ギリギリの、環境の過酷さも相まって必死に生きている主人公(ただ問題の四割ぐらいは彼が作ってるぽいですが)、適度に良い毒素と哀れっぽさと憂愁を抱え込んだ周辺人物たち、鄙び過ぎてどうしようもない山の村、それらを混ぜあわせた感触はなんとも言えず毒々しく虚しく、かつ心地良さを生み出しています。この小説ではシーンの各々を取り出しても十分に破壊力があるのですが、それら全てを繋げてみると、また独特な感覚が生まれます。


 ただ第一章が本当に鋭利なのですが、中盤に入るにつれて物語のキレが次第に弱くなっていき、クライマックスでは「あれナニコレ」という感じがやや入るようなそうでないようなモヤモヤ感が出てくるような気がしないでもないかもしれません! 構成上その結末は予想できなかったわけじゃないんですが、持って行き方がアレ? という感覚です。その辺がやや残念。


 この『TOGIO』をジャンル分けするとすれば、SFとバイオレンスを足して二乗してから二で割ったようなものかもしれません。中道的に凶暴なキャラクターたち、常に快感と快楽を追い求めて突っ走る主人公、パイプと電子機器で繋げられた首都からはそのように感じ取れます。


 ちなみにこの作品、第八回『このミステリーがすごい!』に受賞していますが、読み終えて考えても、これミステリ要素あったっけ? という感じなので、平山夢明さんの『独白するユニバーサル横メルカトル』(『このミステリーがすごい!』2007年度国内部門第一位)と似たような位置づけではないか、と思いました。

 ということで随分久しぶりの感想でした。

トギオ

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