『それではみなさんさようなら』
本棚にあったのを発掘した一品。十年近く前の作品ですが、割れ物とかPC用語(専門的でない意味で)が出てきていて面白いのです。ワレズとかありました。
とりあえずネタバレなしで書きますと、最終的に作者が表現しようと思っていたことは推測できますし(それが最終的に可能であるかはともかく)、作品の根底にあるテーマも理解できるのですが、それらを表現するための説得力が不足である気がします。具体的な描写がありませんし、曖昧に示唆される箇所も多いですし。またガジェットの使い方にしても、なんだか突飛すぎて驚くよりも先に『こんな仕組み成立するの?』と、疑問が出てきます。タイトルに自殺が付いているだけあって、大量の人々が大根でも引っこ抜くようにスポンスポン自殺しており、そこらへんをある程度抑え気味にして、重要なテーマ部分を固めて欲しかったです。むむむ。
個人的見どころとしては、料理中に指から手の甲までざっくりざっくり切ってしまうシーン(その際の擬音とか想像したら背筋が縮み上がりますね)と、走行中の電車から外にI can fly! と若者やサラリーマンが飛び出していくシーン。ここでは、現代を生きる我々には思い切りが足りない、という教訓を伝えてくれます。
表現として面白かった点としては、人の精神をブックマークするところで。そのうち精神にハッキングするようになるのも面白いかもしれません。そこにクラウドとか付箋とかウイルスメールとか足跡帳とか……まあ、他で使用されているかもしれませんが。
- 作者: 山下定
- 出版社/メーカー: エニックス
- 発売日: 2002/02
- メディア: 単行本
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